今、青春の1ページ
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試合は私たちの圧勝だった。相手はあまりやる気が無かったのか、あっという間に決着が着いてしまった。
「名字、気張ってた割に楽勝やったな!」
岸本先生がハイタッチの手を出してきた。一瞬躊躇ったが、私はそっと手を合わせた。控えめやな〜と岸本先生は笑っていた。
そしてそのまま、体育館の裏に向かった。岸本先生は呑気に私に着いて来る。
「こんなトコまで来てどうしたん?」
私はくるりと振り返り、岸本先生の方を見た。目を見ることなんて出来ず、お臍の前で握った自分の手を見つめる。
『先生のこと、好きになっちゃいましたっ……それだけ、伝えたくて…』
言い終えた後、暫く顔を上げることが出来なかった。その間、岸本先生は何も言わなかった。俯いたまま目だけでチラリと見ると、岸本先生は真っ赤な顔をしていた。
『せ、先生…?』
「…不意打ちはアカンわ。俺は彼女おるから、名字の気持ちには答えられへんけど…うん…」
彼女がいるとサラリと言われてしまうと、どんな顔をすれば良いのか、次に何を言えば良いのか分からなかった。
「でも嬉しいわ。ありがとうな。実習に来てホンマ良かった」
岸本先生はやっぱりニッと歯を出して、照れくさそうに笑っていた。
岸本先生と、どうこうなりたい訳じゃなかった。
ただ気持ちを伝えずに会えなくなるのが嫌だった。
それだけ。
だけど……
私はこの時、人生で一番思い切った行動に出た。岸本先生の腕を引き、体制を低くさせ、思い切り背伸びをして先生の頬にキスをした。
『先生なら、きっと良い教師になれると思います』
先生が耳まで真っ赤になっていたのを少し目に焼き付けた後、私は皆がいる体育館へと駆け出した。
背後から声がした気がした。
「……っ……マセガキッ!!」
先生に触れた唇が熱い。
いつまでも冷めないように、いつまでも忘れないように、そっと指で触れてみた。
少しだけ、涙が溢れた。
私の大切な、青春の1ページになった。
おわり
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