だけど愛はいつだって答えがある訳じゃない
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「あっ!ほら、来たよ!ピョン先輩!」
『えっ!ウソ!』
名前は次の授業の為に、クラスの友だちと音楽室へと向かっていた。長い渡り廊下の先には、名前が密かに想いを寄せている人物の姿があった。
その人物は3年生でバスケット部キャプテンの深津だった。山王工業バスケット部は強豪であり、昨年はインターハイで優勝したという華々しい実績がある。しかし、名前が深津に想いを寄せるキッカケはバスケットはあまり関係無かった。
それは数ヶ月前に行われた、校内マラソン大会でのことだった。名前は保健委員のため、本部で救護箱と共に待機する役回りをしていた。マラソンを回避でき、しかも校内のマラソン大会などで大それた怪我をする人もいないだろう、とのんびり椅子に腰掛けていた。
マラソンは、校庭を一周してから校外に出て、再び戻って来るコースで行われる。そしてスタートからものの数分で、怪我人が出たと連絡があった。
(えぇぇぇ…ど、どうしよう…絆創膏くらいしか貼れないよ…)
戸惑う名前の前に現れたのは、同じクラスの沢北だった。
『えっ…沢北くんが怪我人?』
「大したことねーよ。勢いよくスタートしたら将棋倒しになっちゃって…でも試合が近いからってキャプテンに止められた」
ちぇっと口を尖らせる沢北の視線の先には、キャプテンと呼ばれた男子生徒、深津が立っていた。
「わがまま言うなピョン」
「も〜、クラスメイトの前でやめて下さいよ〜。名字、絆創膏ちょうだい?」
『あ、うん。手洗ってないよね?私、貼ってあげるよ。消毒もしなきゃ』
名前は消毒薬をコットンに吹きかけ、ピンセットで掴み、傷口に当てた。そして大きめの絆創膏をペタリと貼り付けた。
『はい、終わり』
「サンキュ!名字、上手いじゃん」
『こんなの誰でもできることだよ〜』
沢北に褒められて少し照れる名前は視線を感じ、見ると深津がジッと自分を見ていた。
「名字さん、動きに無駄が無くてキレイだったピョン」
そう言って目を細め、何かを愛でるような深津の表情に名前は釘付けになってしまった。
なんて幸せそうに笑うのだろう。こんな顔をさせられるなら、いくらでも傷の手当てをするのに…。
この時の表情が忘れられず、校内で見かける度に意識し、とうとう名前は深津に恋をしていることに気付いたのだった。
友だちは「ピョンピョン言ってて変わってる人だけど…そういうのがシュミなの?」と言う。別にピョンと言う所は好きになったこととあまり関係無かったが、周りがどう言おうと深津を好きな気持ちは絶対だった。
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