迷子のお稲荷さん、キャラメルをどうぞ
NAME CHANGE
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時は流れ、名前は19歳になった。父が営む時計屋を手伝いながら、日々を過ごす中、戦争はどんどん険しさを増していた。
ある日、名前は時計修理に必要なネジを買いに、馴染みの工具屋に来ていた。暫く店主と雑談していると、バタバタと遠くの方から妹が走って来るのが見えた。
「お姉ちゃん!」
『ど、どうしたの?そんなに慌てて…』
妹は何か言おうとしているが、息を切らし過ぎて何を言っているか分からなかった。
「…ハァ…すぐ帰って…来て…お姉ちゃんを…お嫁に欲しいって人が…来てる…!」
『えぇぇぇぇ!!』
予想外の事に名前は驚き、顔が熱くなるのが分かった。工具屋の店主は「良かったじゃない」と微笑んでいる。
とにかく、名前は妹と家に帰ることにした。それにしても、相手は一体…?思い当たる人物が全くいない。不安と期待が入り混じった気持ちで、家路を急いだ。
家に着き、二人は裏庭の方から客間を覗いた。そこには一人の青年と、その父親らしき人が座っていて、父と母が話をしている。
「どう?誰か分かる?」
『いや…全然分からない…』
その晩、父と母に話を聞くと、青年は横須賀で海軍録事をしている人らしく、家柄も嫁ぎ先には申し分ないということだった。よって、縁談を断る理由が無いという訳で……気付けば名前は嫁ぎ先の横須賀に来ており、家で祝言を挙げていた。
今日から夫となる〝楓さん〟は、祝言中、一言も喋らなかった。むしろ、少し居眠りをしていたくらいだ。まだちゃんと声も聞いたことが無い人が、自分の夫になる…結婚とは不思議な仕組みだ、と名前は考えていた。
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