Addictive Bitterness
NAME CHANGE
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何故言葉にしてしまったのだろう。
別に私たちは恋人でも何でもない。むしろこの関係が心地良いとさえ思っていたくらいだ。でも無くなると思った途端、しがみ付きたくなってしまった。
どうして…?
いや、そんなこと考えなくても分かる。でもそれを伝えて、土屋くんはどんな反応をするのだろう……本当はそれが怖かっただけだったのかもしれない。
何も言えずにいると、土屋くんが私の手を優しく握った。
「今、ちょっとずつチュウしとったら、もっともっと欲しくなっていったやろ?」
『…うん』
「それやねん」
『えっ…?』
「名前ちゃんと会う度に、もっと、もっとって思うようになってきてん。このままの関係の方が気楽かなって思っとったけど、それ以上が欲しくなってきて…でもそれを言うと、全部無くなってしまいそうで怖かってん。勝手やろ、僕って。それでも今日は気持ちを伝えな思て、いつもと同じじゃアカンなって」
少し困ったように、土屋くんは微笑みながら話してくれた。その言葉を聞いて、全く同じことを考えていた私はあまりにも嬉しくて、土屋くんの胸に顔を埋める。
「…名前ちゃん?」
『嬉しい。私も同じこと考えとったから…』
土屋くんは私を強く抱き締め返した。そして耳元で優しく囁く。
「やっぱり僕には、名前ちゃんが必要なんやな。あの日出会ったのも、全部決まっとったことなんやな」
あの日が全ての始まりだった。
1分違えば気付かなかったかもしれない、元彼の浮気
本当の土屋くんが笑ってくれた、あの日
そして、本当の土屋くんに愛されていると確信した今
さっきよりも、もっともっと土屋くんを好きになる。
『コーヒーみたいやな』
「え?」
『じっくり時間をかけて淹れれば美味しくなるし、知れば知る程奥が深い』
「ホンマや。ほんなら、やっぱり甘いチョコレートが必要やん」
『うん。ちょーだい?』
少しわざとらしく可愛く言ってみた。それに気付いているのかは分からないけれど、土屋くんの表情から、ハートを射抜いたのは確かだった。
「こんな僕で良かったら、ずっと側におるで」
『大丈夫。そのままの土屋くんが大好きやで』
その日淹れたコーヒーは、甘い甘いチョコレートにピッタリな、程よい苦味のある深い深いコーヒーだった。
もっともっと欲しくなる味で、気付いた時にはとっくに虜になっていた。
土屋くんみたいだと思った。
おわり
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