Far Seats Love Story
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いつも通り校門をくぐり、玄関で靴を替え、教室に向かう。
教室の後ろのドアから中に入る。
窓側の方に向かおうとして、足が止まる。
(あっ…席替えしたんだった…)
私はくるりと方向転換し、教室のほぼ真ん中の席に着く。
(あれ…?)
何か物足りなさを感じ、席に着いていてもそわそわと落ち着かない。黒板の方を見ても、いつもの風景が広がっているだけだ。
キョロキョロと周りを見渡すと左前方に、ポケットに手を入れながら椅子に深く腰掛け、窓の外をぼんやりと見る男子が見える。宮城くんだ。
(あ、そっか…)
私は気付いた。
いつも宮城くんの横を通って、挨拶をして、宮城くんがお決まりの言葉を言う。「オハヨ、今日も可愛いね」って。
昨日まではそれが当たり前だった。何気なくやっていたけれど、無くなった途端、心と身体が離れてしまい、よそよそしくなった気がする。
私は暫く宮城くんを見ていた。教室は皆の声でザワザワしている。ここから呼んでも私の声では聞こえないかもしれない。
(気付いて…)
心の中で念じながら、視線を送り続ける。すると、宮城くんが目線だけをこっちに向けた。私に気付き、一気に表情がパアッと明るくなった。あぁ、その顔、好きだなぁ。
(あれ?…好き?)
〝好き〟という言葉が心と身体をどんどんつなぎ合わせてゆく。
宮城くんの横に行って挨拶しよう…そう思い立ち上がった途端チャイムが鳴り、同時に先生が教室に入ってきた。
立ち掛けた私は、ストンとまた椅子に座る。〝おはよう〟は、朝しかできないのに…そう思い宮城くんの方に目線を向けると、懸命にペンで何かを書いている。そしてペンを置き、ノートをこちらに向けた。
〝オハヨ!今日もカワイイね!!〟
私にも見えるように、ノート一面に大きな文字で書いていた。私は嬉しくて、ニヤニヤを抑えるのに必死だった。そして、宮城くんはノートのページをペラッとめくった。
〝スキだよ〟
その文字に、私は思わずガタッと音を立てて立ち上がる。先生を含め、教室中の視線が私に集まる。
「ん?どうした?」
『あっ…いや…な、何でもないです…』
先生の言葉で我に返り、再び椅子に座った。チラリと宮城くんの方を見ると、もうこっちを見てはいなかったけれど、耳まで真っ赤なのは分かった。つられて私も赤くなる。
あと数十分後の休み時間が待ち遠しい。
次はちゃんと、言葉で伝えるから。
明日からは、席なんて関係ない。
一番近くで君の笑顔を見せて。
おわり
あとがき→
