青い夏の日だった
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インターハイが終わった。
学校に戻り、1人屋上に出ようと走った。しかし夏休み中のため、鍵が閉まっていて出られなかった。階段に座り込んだ途端、今まで耐えてきた涙がボロボロと溢れ出てきた。
北野さんに会えた。
夢とは違い、優しく目を細めていた。
でも、優勝できなかった。
窓も無く、陽の当たらないこの場所が俺にはお似合いなのかもしれない。もう自分でもよく分からない程グチャグチャの感情を抑えられなかった。
その時、階段を昇ってくる人影が見えた気がした。でもそれどころでは無い俺は、ただ声を殺して泣くことしかできなかった。
ふと横に誰かが座り、肩を抱かれるようにふわりと抱きしめられた。涙でよく見えないが、妙に愛おしいあのつむじが目の前にあることだけは分かった。
『先輩、お疲れ様でした』
「……っ……お前…なん…で…」
『落ち着いてから話して下さい。ずっと、こうしてますから』
俺は名前を抱き締め、思い切り泣いた。ちょうど鼻につむじが当たる。そこから香る甘い匂いが心を落ち着かせた。
名前は本当に俺が落ち着くまで、そのまま側にいてくれた。ようやく話せるようになった俺は口を開く。
「スマン…カッコ悪い所見せてもうたな」
『先輩のカッコ悪い所なんて、ずっと見てきたから平気です。相手に肘打ちするところとか』
何も言えなかった。全くその通りだったからだ。
『間違いだらけの先輩と死のうと思ってたのに…相手の選手と、何より先輩自身に先を越されちゃいました』
「……俺、自身?」
『エースキラーは、殺されたんです。2人の男に』
そういうことか、と妙に納得した。
「ほんなら英雄やな、その2人の男は」
『ホンマですね。勲章モノですね』
まだ腕に名前を抱き締めていたぬくもりが残っている。消えないで欲しい。離れないで欲しい。そう思うと俺はまた名前を抱き締めていた。
『先輩』
「なんや」
『もし私が間違いだらけになった時は、先輩が殺して下さいね』
「…おう。一発で仕留めたるわ」
抱きしめる腕に力が入る。
「名前」
『はい?』
「好きや」
名前の肩がビクッと震えたのを感じた。身体を離し視線が交わると、何の合図もなくお互い目を閉じて唇を重ねた。
頬に温かい物が伝ってきた。そっと目を開けると、名前の涙だった。薄暗い階段で光もないはずなのに、キラキラと光っていたのは何故だろう。
「仕留められたんは、俺の方やな」
名前は全てを包み込むように優しく微笑んだ。
一緒に帰った、あの日と同じように。
涙が溢れた今日という日、
差し伸べてくれた君のぬくもり、
俺は、忘れはしない。
青い、青い、夏の日だった──
おわり
あとがき→
学校に戻り、1人屋上に出ようと走った。しかし夏休み中のため、鍵が閉まっていて出られなかった。階段に座り込んだ途端、今まで耐えてきた涙がボロボロと溢れ出てきた。
北野さんに会えた。
夢とは違い、優しく目を細めていた。
でも、優勝できなかった。
窓も無く、陽の当たらないこの場所が俺にはお似合いなのかもしれない。もう自分でもよく分からない程グチャグチャの感情を抑えられなかった。
その時、階段を昇ってくる人影が見えた気がした。でもそれどころでは無い俺は、ただ声を殺して泣くことしかできなかった。
ふと横に誰かが座り、肩を抱かれるようにふわりと抱きしめられた。涙でよく見えないが、妙に愛おしいあのつむじが目の前にあることだけは分かった。
『先輩、お疲れ様でした』
「……っ……お前…なん…で…」
『落ち着いてから話して下さい。ずっと、こうしてますから』
俺は名前を抱き締め、思い切り泣いた。ちょうど鼻につむじが当たる。そこから香る甘い匂いが心を落ち着かせた。
名前は本当に俺が落ち着くまで、そのまま側にいてくれた。ようやく話せるようになった俺は口を開く。
「スマン…カッコ悪い所見せてもうたな」
『先輩のカッコ悪い所なんて、ずっと見てきたから平気です。相手に肘打ちするところとか』
何も言えなかった。全くその通りだったからだ。
『間違いだらけの先輩と死のうと思ってたのに…相手の選手と、何より先輩自身に先を越されちゃいました』
「……俺、自身?」
『エースキラーは、殺されたんです。2人の男に』
そういうことか、と妙に納得した。
「ほんなら英雄やな、その2人の男は」
『ホンマですね。勲章モノですね』
まだ腕に名前を抱き締めていたぬくもりが残っている。消えないで欲しい。離れないで欲しい。そう思うと俺はまた名前を抱き締めていた。
『先輩』
「なんや」
『もし私が間違いだらけになった時は、先輩が殺して下さいね』
「…おう。一発で仕留めたるわ」
抱きしめる腕に力が入る。
「名前」
『はい?』
「好きや」
名前の肩がビクッと震えたのを感じた。身体を離し視線が交わると、何の合図もなくお互い目を閉じて唇を重ねた。
頬に温かい物が伝ってきた。そっと目を開けると、名前の涙だった。薄暗い階段で光もないはずなのに、キラキラと光っていたのは何故だろう。
「仕留められたんは、俺の方やな」
名前は全てを包み込むように優しく微笑んだ。
一緒に帰った、あの日と同じように。
涙が溢れた今日という日、
差し伸べてくれた君のぬくもり、
俺は、忘れはしない。
青い、青い、夏の日だった──
おわり
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