幸せのオーバーフロー
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「おとうちゃん、おにぎり、どーぞ!」
「ん。中身、何?」
「つくだに!」
「渋っ…」
南は店に立ちながら、長女のままごとに付き合っていた。そろそろぱこが帰って来る頃だと思い時計をチラリと見ると、家の方からがバタンとドアが閉まる音がした。
「おかあさん、きた!」
長女がバタバタと走っていき、南が跡を追うと、ぱこと次男が帰ってきていた。
『ただいま。お父ちゃん、ええ子にしとった?』
「まぁまぁ」
(まぁまぁなんかい…)
優しい眼差しで子どもたちと会話するぱこだったが、どうも様子がオカシイと南は察していたのだった。
子どもたちが寝た後、ぱこはキッチンに立ち、黙々と食器を洗っていた。
(今日は凄かったな…)
保護者会で役員をやるように言われるかと思いきや、全く逆だった。
「南さんちは小学校との兼ね合いもあるし、大変やろ?ええで」
『えっ…いや、そんな…』
「ていうか、気の合う人らでやりたいんですわ。察して欲しいんですけど」
「家に帰って素敵な旦那様と仲良う商売しとったらええんちゃいます?」
「〝私、幸せです〟って言わんばかりやもんな、南さんて」
あれは何だったのだろう…もしかして、自分は意図せずあの中の誰かを傷つけていたのだろうか……
ぱこから無意識にため息が漏れる。
そこに風呂上がりの南がやって来て、冷蔵庫のビールを取り出した。プシュッと缶を開けぱこの隣りに立ち、グビグビの喉を鳴らして飲む。
「今日の保護者会、どうやったん?」
『ん?うーん…まぁ、女のイザコザ?みたいなんがあったかな』
南はビールを持ってソファに座り、ポンポンと自らの隣りを叩く。
「ほら、ここ来い。ちゃんと言えや。聞くから」
その仕草と表情にぱこはキュンとし、いそいそと隣りに座る。そして今日あったことを南に話した。
「女が集まるとロクなことないな。しょーもな」
『〝私、幸せですオーラ〟をダダ漏れにして、それが誰かをムカつかせてたってことなんやろうか…普通にしとったつもりやけど…』
「もしホンマにそうやとしたら、俺はめっちゃ嬉しいけどな」
南は左手に缶ビールを持ち、右手でぱこの肩を引き寄せた。
「お前がホンマに幸せってことやんな」
『まぁ、そういうこと…やな』
「それじゃ、そいつらは僻んでんねんな」
『えっ…そ、そうなんかな?』
南はビールを置き、ぱこの頬に両手で優しく触れる。
「お前が幸せなら、俺も幸せや。それでええやん。僻ましとけ。また何か言われたら、俺が言うたるわ」
優しく微笑みながら、柔らかい口調で南はそう言った。少しお酒が入ると表情が緩む南が愛おしい…。
『烈ぃ…』
「ん?」
『私、幸せや〜』
少し甘えたような口調で言ったぱこが愛おしくて、思わず頬を寄せ、蛸のように口を尖らせる。
「…ブサイク」
ぱこの顔を見て南は吹き出した。
ぱこもつられて笑い出す。
いつでも帰れる場所がある。
いつでも愛しい家族が待っている。
嫌なことがあってもこうして愛を確かめ合うだけで、取るに足らないことになってしまう。
やっぱり、幸せオーラは本当にダダ漏れだったのかもしれない…
ぱこはそう思いながら南にしがみつき、キスをせがんだ。
おわり
あとがき→