君は僕の問題、僕は君の答え
NAME CHANGE
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『名門、山王工業バスケ部のキャプテンってどう在るべきだと思いますか?』
2年生の秋、新キャプテンとなった深津が部活に向かう途中、いきなり見知らぬ女子に話しかけられた。靴のラインの色からして、1年生のようだ。
「…君、名前は?」
『1年3組の名字 名前です』
「名字さん、答えはまた今度改めて伝えるピョン」
深津の足は体育館の方へと向かう。
考えてみれば、そうだ。日本でも名門中の名門である山王工業バスケットボール部で、しかもキャプテンという立ち位置にいるということは、第三者から見れば物凄いことになるのか…と、深津は妙に納得していた。
「河田は、山王の副キャプテンっていう立ち位置をどう思ってるピョン?」
またおかしなことを言い出した、と河田は思ったがいつもより内容に現実味があったため、真剣に答えてみることにした。
「俺にとっては、ただの肩書きに過ぎん。俺はセンターとして、チームが勝つために役割を果たすだけだべ」
「肩書きか…」
それはそうなんだが…と、どうにも腑に落ちない深津は、その後も暫く名前の質問の答えを真剣に考えていた。
それからというもの、度々部活に向かう深津の前に名前は現れた。
『先輩、答えは纏まりましたか?』
「なかなか適切な答えが浮かばないピョン。名字さんは、どうだと思うピョン?」
深津は逆に名前に問いかけてみたが、それはアッサリと返されてしまった。
『…分からないから、先輩に聞いたんじゃないですか』
何故か深津の心にグサリと突き刺さる物があった。名前の言う事が最もだからだ。
その日から深津はキャプテンである時、つまり部活中の集中力が増した。パスのタイミング、周りへのフォロー、後輩たちへのアドバイス、監督への提案…全てにおいてまた一歩、レベルアップしていった。
ある日、深津は夢を見た。自分が名前に答えを伝えると、彼女は心底つまらなそうな顔をしていた。そんな顔をさせてしまったことに胸が締め付けられ、何か言わなければ…というタイミングで目が覚めた。
(名字さんはスッキリ納得する時、どんな顔をするんだろう…)
この日から、答えを出すことよりも名前の笑顔が見たいという想いがどんどん強くなっていった。
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