Distinction
NAME CHANGE
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委員会があったあの日、目を腫らす名前ちゃんが何故か放っておけなくて、咄嗟に腕を掴んでしまった。
掴んだ腕が細くて柔らかくて、泣き疲れた目で見上げられた途端、僕は彼女に心を奪われた。
可愛いとか、美人とか、そういうことではなかった。何故か分からないけれど、守ってあげたくなった。
2人で会う度に身体を重ねた。僕にとっては心を重ねることと同じであって、どんどん彼女に惹かれていった。例え、彼女が寂しさを紛らわしているだけだったとしても…。
インターハイが終わり、今日、挨拶を済ませて僕の高校バスケは終わりを迎えた。バスケをしている時だけは、彼女に恋人がいることを忘れられていた気がする。
今日は彼女と会うことになっている。そして僕は、ケジメをつけなければならない。
会うのはいつも僕の部屋だった。親は共働きで夜まで帰って来ない。
『先輩、引退してどんな気持ちですか?』
「んー、どうやろ。あんま実感無いわ」
ベッドに並んで座り、話をした。そして僕は、彼女の手をそっと握る。
「引退したら、言おう思っててん。僕、名前ちゃんが好きや」
〝彼氏がおっても〟の一言が言えなかった。少しでも名前ちゃんに彼氏のことを考えて欲しくなかったから。
名前ちゃんは驚いたように目を開き、こちらを見ている。
「バスケしとる時以外、いつも名前ちゃんのこと考えてまう。引退したらずっと考えてまうやんか。だから言わなアカンなって…」
いっそ、面と向かってフラれてしまえばそれで良いと思った。バスケをしない生活で、名前ちゃんとこの関係を続けていく自信は無い。
これが僕のケジメだ。
すると、握っていた手の上に名前ちゃんがもう片方の手を重ねた。
『私も先輩が好きです。いえ、とっくに好きでした』
予想していなかった言葉が、僕の中を突き抜けて行く。
「…ほな、彼氏はどないするん?」
恐る恐る〝彼氏〟という言葉を口にした。
『…ホンマはもう、ずっと前に別れてました』
「えっ…」
『言えなかったんです。先輩が私と会うのは、寂しさを紛らわしてくれようとしてただけだと思ってたから……だから今、めっちゃ嬉しいです!』
真っ直ぐに僕の目を見つめる名前ちゃんの真剣な表情に、やっぱり心を奪われてしまう。
僕は名前ちゃんを、ギュッと抱きしめた。壊してしまいそうで、優しく触れることしかできなかったけれど、今日でそれもおしまいだ。
「似た者同士やん……」
『…ホンマですね』
僕の高校バスケが終わった日は、誰にも遠慮せず、君への想いを力いっぱい伝えられる日にもなった。
忘れられない、僕たち2人の大切な日。
その後、国体代表選手に選ばれて今度はバスケも君も一緒にいる日々が訪れるのは、まだ少し先の話になる。
おわり
あとがき→
掴んだ腕が細くて柔らかくて、泣き疲れた目で見上げられた途端、僕は彼女に心を奪われた。
可愛いとか、美人とか、そういうことではなかった。何故か分からないけれど、守ってあげたくなった。
2人で会う度に身体を重ねた。僕にとっては心を重ねることと同じであって、どんどん彼女に惹かれていった。例え、彼女が寂しさを紛らわしているだけだったとしても…。
インターハイが終わり、今日、挨拶を済ませて僕の高校バスケは終わりを迎えた。バスケをしている時だけは、彼女に恋人がいることを忘れられていた気がする。
今日は彼女と会うことになっている。そして僕は、ケジメをつけなければならない。
会うのはいつも僕の部屋だった。親は共働きで夜まで帰って来ない。
『先輩、引退してどんな気持ちですか?』
「んー、どうやろ。あんま実感無いわ」
ベッドに並んで座り、話をした。そして僕は、彼女の手をそっと握る。
「引退したら、言おう思っててん。僕、名前ちゃんが好きや」
〝彼氏がおっても〟の一言が言えなかった。少しでも名前ちゃんに彼氏のことを考えて欲しくなかったから。
名前ちゃんは驚いたように目を開き、こちらを見ている。
「バスケしとる時以外、いつも名前ちゃんのこと考えてまう。引退したらずっと考えてまうやんか。だから言わなアカンなって…」
いっそ、面と向かってフラれてしまえばそれで良いと思った。バスケをしない生活で、名前ちゃんとこの関係を続けていく自信は無い。
これが僕のケジメだ。
すると、握っていた手の上に名前ちゃんがもう片方の手を重ねた。
『私も先輩が好きです。いえ、とっくに好きでした』
予想していなかった言葉が、僕の中を突き抜けて行く。
「…ほな、彼氏はどないするん?」
恐る恐る〝彼氏〟という言葉を口にした。
『…ホンマはもう、ずっと前に別れてました』
「えっ…」
『言えなかったんです。先輩が私と会うのは、寂しさを紛らわしてくれようとしてただけだと思ってたから……だから今、めっちゃ嬉しいです!』
真っ直ぐに僕の目を見つめる名前ちゃんの真剣な表情に、やっぱり心を奪われてしまう。
僕は名前ちゃんを、ギュッと抱きしめた。壊してしまいそうで、優しく触れることしかできなかったけれど、今日でそれもおしまいだ。
「似た者同士やん……」
『…ホンマですね』
僕の高校バスケが終わった日は、誰にも遠慮せず、君への想いを力いっぱい伝えられる日にもなった。
忘れられない、僕たち2人の大切な日。
その後、国体代表選手に選ばれて今度はバスケも君も一緒にいる日々が訪れるのは、まだ少し先の話になる。
おわり
あとがき→