Stardust Tears
NAME CHANGE
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『で、どうしたんですか?わざわざ海まで来て…』
潮の香りが鼻をくすぐる。独特のふわりとした海風が藤真の前髪を浮かせ、やはりその立ち姿に名前は見惚れてしまう。
「俺、転勤するかもしれない…」
『えっ…?』
全く予想していなかった藤真の言葉に、名前は呆然と立ち尽くすしかなかった。
「まだ正式に決まった訳じゃねぇけど、たぶん大阪の支社に行くことになると思う」
『……いつから?』
「早くて、来月から」
名前は夢を見ているのではないか、いや、夢であって欲しいと思った。
サラリーマンたるもの、異動、転勤はつきものだということは重々承知だ。しかし、恋人という関係になってまだ1ヶ月しか経っていない2人には受け入れ難い現実だった。
寄せては返す波音が、ただ淡々と繰り返される。
何か言わなければと名前が口を開こうとした瞬間、藤間に背後からふわりと抱き締められた。
「お前は俺より10コも若い。これから色んなことができる。俺といることで、辛い思いはさせたくねぇんだ」
自分を想う藤真のありのままの気持ちが、耳元に言葉となって染み込んでくる。
「お前が決めてくれ。俺はどんな関係だろうと、お前の記憶の片隅に居座るって決めたから…」
『何それ……ずるい…』
名前は藤真の手にそっと自身の手を重ねた。
『ストロベリームーンも天の川も大阪の空にだって現れるんですよ?だから私、大丈夫です。それに、なかなか会えない方が…かけがえなく…て……っ……』
名前の涙が重なる手に溢れ落ち、濡れた箇所を藤真が指で撫でる。
「良かった。別れるって言われなくて」
『…分かってて言ったくせに』
藤真は名前を自分の方に向かせた。肩に手を置き、腰を屈め、真正面から名前の顔を見つめる。
「お前の涙なんて滅多に見れねーよな。なんか、流れ星っぽいな」
そう言って、ゆっくりと唇を重ねた。名前の目から再び、ポロポロと星屑がこぼれ落ちてゆく。
『ばか……っ…ぅっ…』
「だー!もう!泣くなよ!よし、流星群に願い事してやる!
来年の七夕もここで名前と星を見られますように。
これで大丈夫だろ?」
藤真は名前を胸にすっぽりと包み、強く強く抱き締めた。
『な、泣かせるって意味じゃ…ないですよね?』
「…台無しにすんな。小っ恥ずかしい」
少し頬を赤らめ、口を尖らせる藤真が愛おしくて見上げていると、藤真の頭上を流れ星が駆け抜けていったのを名前は見逃さなかった。
(…藤真さんの願いが、叶いますように)
心の中で呟いた後、心地よい藤真の胸の鼓動に耳を澄ませ、名前は静かに目を閉じた。
数週間後
名前の部署で、他部署からの異動者が朝礼で紹介された。
「営業部から異動してきました、藤真です」
『…ここ、大阪じゃないですよ』
「宜しくお願いします…」
おわり
笹の花言葉「ささやかな幸せ」
七夕の夜、ささやかな幸せがあなたにも訪れますように。
2020.7.7 ぱこ
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