「今日、定時であがれるか？」


廊下でたまたますれ違った藤真に耳打ちをされ、名前は周りに人がいないかキョロキョロと確認していた。


1ヶ月前、ストロベリームーンの夜に結ばれた2人は恋人同士であることを会社では隠している。

仕事中にプライベートの話はなるべくしないようにしていたため、何かあったのだろうかと名前は戸惑ったが、それはすぐにポジティブな方へとかき消されていった。


今日は7月7日、七夕なのだ。


スピッツの草野マサムネが雑誌のインタビューで言っていた。
〝クリスマスばかりが恋人たちの特別な日として扱われがちだが、その気になれば年中いつでもできることしかしていない。しかし七夕は織姫と彦星が年に一度しか会えない大切な日であり、その方がよっぽどかげがえなくて、いやらしい〟と。

誕生日も近いことだし、先月のストロベリームーンに託つけて何かロマンチックなことを企てているのかもしれない…

名前は期待を胸に、定時を待った。




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