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NAME CHANGE
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『牧さん!見送ります』
「…ああ、ありがとう」
いつもマネージャーとして牧の隣に立っていたのに、今は何だかぎこちない気がした。
『初めてかもしれないですね。キャプテンじゃない牧さんと並んで歩くなんて』
「ん?ああ、そうかもな」
最初で最後になるかもしれない、そう思うと名前の胸に込み上げてくる物があり、言葉に詰まった。
生徒玄関はもうすぐそこだ。
(廊下って、こんなに短かったっけ…)
すると牧の足がピタリと止まり、名前の方を向いた。
「さっき神が言っていたことなんだが…」
『はい。あれってどういうことなんですか?私以外意味を分かってるような気がして…』
牧は照れくさそうに一度目線を逸らしたが、次に名前の方を見た時の眼差しは真剣そのものだった。名前はその瞳に吸い込まれそうだと思った。
「名前が内部進学しないと聞いて、驚いたんだ。てっきり海南大でもマネージャーをすると思っていたから…」
『すみません…でも、大学には凄いマネージャーがいるって聞きましたよ?」
「いや、そうじゃなくてだな……」
牧は一呼吸置き、ゆっくりと口を開いた。
「俺は、名前が好きなんだ」
突然の告白に名前は驚いた。
しかし神奈川の帝王と呼ばれた男が目の前で頬を赤らめ、少しモジモジしている姿を見ると妙に冷静になれた。そのどこにでもいる普通の高校3年生らしい姿に、胸がキュンと音を立てて鳴りそうな気さえした。
「インターハイの決勝で負けた時、名前は泣かなかったよな。〝次の目標が明確になった〟って。あの時、なんてかっこいいんだろうと思った。そんな名前がずっと好きで、支えられてきたんだなって気が付いたんだ」
名前は牧の真剣な眼差しに心を鷲掴みにされた。そして今日が近付く度に感じていた何とも言えない複雑な気持ちが何だったのか、今ようやく分かった。
『私は行きたい大学があるので、内部進学はしないですけど……これからは牧さんの彼女として、支えていきます』
名前の言葉に、牧は安堵の笑みを浮かべた。
「…頼むぞ。名前でないと駄目なんだ」
牧の大きな手が、名前の頭を優しく撫でた。
この手がもっと高みの何かを掴む日は、そう遠くないはずだ。
一生ついて行くから、
私に知らない世界を見せて。
名前はそう心の中で呟き、玄関口へ向かう牧の背中を見送った。
おわり
おまけ→