ミタイ、キキタイ、スキキライ
NAME CHANGE
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「なぁ、名前」
『はい?』
「俺を初めて見た時、良い意味で思ってたのと違うって言ったの覚えてるか?」
『もちろん、覚えてますよ。あの日のことは、忘れもしません』
「最後に聞かせてくれ。あれはどういう意味だったんだ?」
今度はしっかりと名前の方を見ながら、魚住は言った。いつものTシャツ短パン姿ではなく、キッチリと制服を着ているからか、名前には何だか別人のように見えた。
『私、〝ビッグ・ジュン〟がいるから陵南に入ったんですよ。中学の時から知ってて、試合も観に行ったりしてました。今は頼りないけど、この人は強くなるなって思ってたんです』
魚住は予想外の返答に驚いたが、そのまま名前の話を黙って聞いた。
『初めて目の前で話しているのを見たら、試合の時の強張った顔つきと全然違うんですもん。普通に笑える人なんだなって思ったんです。だから、良い意味で違ったなって』
「そ、そうか…」
想像していた物とは全く違う内容に、魚住は戸惑った。名前の顔を見るのが恥ずかしくなり、再び練習している方に目を向けた。
『あれから1年経って、すっかり貫禄がついちゃいましたね。もう一度あの優しい笑顔が見たかったな』
魚住は拳をギュッと握り、口を開く。
「俺も…名前の笑った顔が見たいと思う。…引退してからも」
チラリと横目で名前に目を向けると、こちらも予想外の返答に戸惑っているようだった。
心なしか、頬が赤い気がした。
「よーし、決めた」
『な、何をです?』
「今度は一人前の板前になって、俺の料理で名前を笑顔にしてやる」
『…私、好き嫌い多いですよ?』
「構わん。好きにさせてみせる」
頭から煙が出るのではないかという程、名前の顔がボッと赤くなった。魚住は一瞬理由が分からなかったが、すぐに名前と同じように赤くなった。
「り、料理の話だからな!」
『わ、分かってますよっ……でも…料理じゃない方も、好きになれたら良いなって、思います…』
二人の視線が交わる。
もう少しだけ、キャプテンとマネージャーの関係でいたかった。でも、今この瞬間から新しい何かが始まろうとしている。
「おい!名前!そろそろ戻れよ!仙道来たぜ!」
越野の声で現実に引き戻された。二人は吹き出し、笑い合う。
『もう行かなきゃ。それじゃ、魚住さん…待ってますから。ちゃんと、好きにさせて下さいね…?』
名前は振り返らず、駆け足で越野の方へ向かった。
「おう!任せておけ!」
名前を差し置き、今日一番体育館に声が響いたのは、他でもない魚住だった。
(仙道、こんな日くらい遅刻しないでよね)
(そうだぞ!)
(魚住さん、やっと伝えられたみたいだね)
(!!…どこから聞いてた?)
(えーっと…名前が〝魚住さん、何考えて…)
(監督!キャプテン変えて下さい!!)
(((!!!)))
おわり
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