飽和水蒸気量
NAME CHANGE
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『また言われへんかったな』
「……」
実はつい先日、岸本と名前は長い間続けてきた幼なじみという関係から恋人関係へと進展していた。
今日こそ南に報告をすると断言しながら、いざ面と向かうと言えずにいたのだった。
『でも今日はちょっとソワソワし過ぎやったんちゃう?烈はスルドイから何かあるって気付いてるで、絶対』
「…ちゃうねん」
岸本は名前の真正面に座り、両肩を掴んだ。
「…なぁ名前、何で南やなくて、俺なん?」
〝何で俺じゃなくて、アイツなんだよ?〟はドラマなんかで聞いたことのあるセリフだが、岸本はそれとは逆のことを言っている。
『実理…?』
「近所のおばちゃんらが言うてるように、やっぱ南とおる方がお似合いなんちゃうかって…」
『えっ…ちょ、何?どうしたん?ホンマに拾い食いしたんちゃうの?』
いつになく自信無さ気な岸本に、名前は戸惑った。ドッキリか何かかと一瞬思ったが、あまりにも岸本が真剣な顔をしているため、これは本気なんだと受け止めた。
『私な、実理の優しい所が大好きやねん。嫌な役回りさせられても、しゃーないなって引き受けたり、烈が間違った方向に行かんようさり気なく正したり…そういうの全部見てきた上で実理が好きやねん。だから……っ…そんな…寂しいこと…言わんといて……』
名前の目からポロポロと涙が溢れ落ちる。岸本はすぐに名前を抱きしめた。
「スマン……名前と付き合ってることが夢みたいで……俺、ホンマに嬉しいわ」
岸本は親指で名前の涙を拭い、触れるだけのキスをした。チュッチュッと音を立てて、何度も繰り返す。
(実理の部屋でこんなんするの、初めてや…)
今日は岸本のお母さんもいないし、このまま…と名前が思った矢先、岸本はスッと立ち上がり携帯を手に取った。
「……おう、南か。さっき言えへんかったんやけど、実は俺と名前な、付き合うてんねんやんか」
岸本は照れると猫背になって、頭を触るクセがある。その姿を見た名前は、愛おしくて堪らなくなった。
南と電話中にも関わらず、名前は岸本に抱き付いた。
「…!! ほな切るで。あ?スピーカーにしろって?」
岸本が音声をスピーカーにセットした。ザーッとノイズが入り、南の声が大きく響いた。
「俺はお前らが好き同士やって、ずっと気付いとったわ。今更何やねん。むしろ遅いわ」
そう言うと、ブチっと電話は切られてしまった。
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