Shabby Happiness
NAME CHANGE
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『うわ、懐かしいなぁ!校舎めっちゃキレイになっとる!』
卒業してから10年以上経つが、ここに来ると当時の思い出が蘇る。
次はよくバスケ部のメンバーでダベっていた、学校近くの河原に行くと名前が言う。来てみるとそこは当時とあまり変わっておらず、南は北野さんがクビになった時のことを思い出した。
『烈は悩むと、ようここに来とったな』
吹き抜ける風が、あの頃と同じように草の匂いを運んできた。
「俺がここに座ってると必ずお前が来て、後ろから俺の名前呼んでたな」
『南ぃ!何しょぼくれてんねん!アイス食べ行こうや〜』
名前の優しさに、どれだけ励まされたことだろう。南は当時のことを思い出し、胸が熱くなった。
『…私なぁ、河原の上から見える烈の背中が好きやってん。カッコよくて、バスケ部のキャプテンでエースで…完璧な人やと思ってたのに、河原で黄昏れることもあんねんなぁと思ったら、愛おしくて堪らんかった。今すぐにでもその背中に飛びつきたい!って思っててん』
南はそっと名前の手を握った。
「俺はここに来れば、お前が来ること期待しとった。一緒にアイス食って帰るだけで、随分励まされとった気がする」
『…高校生の私が聞いたら喜ぶなぁ。あぁ、なんか泣けてきたわ』
名前は今日までにあった色々なことを思い出した。
南に告白された日のこと
大学生になった南と就職した自分の生活リズムが合わず、別れそうになったこと
プロポーズされた日のこと
子どもたちが生まれた日のこと
子どもたちが初めて自分を「おかあさん」と呼んだ日のこと
長女を妊娠した時、戸惑ったが南に産んで欲しいと言われた日のこと
結婚するまでは、ありがちなドラマをなぞっていただけの恋だったかもしれない。それでもお互い好きで、楽しくて、切なくて、胸が張り裂けそうな恋をしていた。この河原に来てもあの日々にはもう戻れないけれど、気持ちを思い出すことはできる。
『あの頃は何も怖くなかった。何て言うか…〝永遠〟っていうのを信じとった』
「…そうかもしれんな。お前は羽伸ばせ言うたら俺と出かけたいって言うし、来たんはこの河原やし。こんなん人が聞いたら笑うかもしれへんけど、そんなお前と一緒におると、俺はやっぱり幸せやな思う」
名前の頬を涙が伝う。
南は名前の肩をそっと抱き寄せた。
『…アイス食べて行こか』
「おう」
この場所から、また始まる気がする。
他人が見れば笑い飛ばすかもしれない、よれよれの幸せを二人はこれからも追いかけていく。
〝永遠〟という、戯言に溺れて。
おわり
おまけ→