Sorrow and Pure
NAME CHANGE
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正直、あの日の出来事からまだ立ち直れていない。
でも誰も気付かなかった〝本当の僕〟を見つけてくれた名前ちゃんの存在で、何とか受け入れられる気がしていた。
どうして名前ちゃんは気付いたのだろうか。あの日さすがの僕も滅入っていて、もしかしたら言葉や行動に感情が出ていたのかもしれない。
運命なんて言葉で言い表せない程の確率で出会ってしまった…とはまだ思いたくない。
だって幸せはいつも、不幸の1ミリ手前だから。
名前ちゃんが楽しそうにベッドを選んでいる。
ライブハウスで初めて見た時は年相応に見えたけれど、こうして明るい所で見ると幼く見えるし、素直に可愛いと思った。
今日だって僕の気を紛らわそうと、配慮あっての誘いなのだろう。
そう思うと目の前の無垢な笑顔が僕には眩し過ぎて、何だか普通の顔をして見ていられなくなってしまった。
何かを察したのか、彼女が急に静かになった。
「どうしたん?急におとなしなったな」
『いや…ええトシこいて、はしゃぎ過ぎやな思て。アハハ』
僕が名前ちゃんに彼女を重ねているとでも思ったのだろう。でも、良くも悪くも2人は全然違う。
こんな風に相手がどんなことを考えているのか、分かった上でいつも偽りの自分を演じてきた。
名前ちゃんが本当に僕を分かっているならば…
僕は名前ちゃんの目をジッと見つめた。
『土屋くん…』
ほらきた。次は〝彼女のことをまだ忘れられてないんでしょ〟的な言葉が飛んでくるはずだ。
『〝彼女のこと、まだ忘れられへんのやろ〟なんて言わへんで』
「えっ…」
思わず声が出てしまった。
『そんなお涙ちょうだいパターンはイヤや。どうせならギャグの一つでも披露してや』
全てを見透かした名前ちゃんは、心底残念そうな顔をしてベッドカバーを選び始めた。
(ああ、この子はホンマに……)
僕は名前ちゃんに、真っ白なシーツが良いと言った。
その上に寝転ぶ、無垢な笑顔の名前ちゃんを今度はちゃんと見たいから。
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