挨拶に代えて〜episode P〜
NAME CHANGE
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飲んでいたのは近所だったため、2人は歩いて帰る。
『烈の手、大っきいなぁー』
繋がれた手を名前はまじまじと見ている。
「お前の手は小さいな」
『……私こんなに小さいのに、これからもこの世界を生きていけるんやろうか』
珍しく弱気な名前が出た。これは相当きているな、と南は思った。
「さっき言うてたやろ。〝ほんの少し誰かを幸せにできる存在になりたい〟って」
『あはは…タマネギみたいにな』
「やっぱ俺は間違って無かった思てん」
『…ゴメン、酔ってて頭回らへん。どういうこと?』
南は手を離し、名前の肩を抱き寄せた。
「もう充分過ぎるくらい、俺はお前に幸せを貰っとる。強くて優しいお前に惚れたあの日から、ずっとや。だから俺の選択は間違ってへんかった」
名前は目をまんまるにして南を見ている。
「…これから先も、全部俺に吐き出したらええ」
『うん…ありがと』
南の胸にそっと寄り添い、名前は目を閉じた。
「結婚……しよか」
南の掠れた声が名前に降り注がれ、再びまんまるに開かれた目から今度はスーッと涙が溢れてきた。
名前は、ずっと分かっていた。
こんな自分を分かってくれるのは、もう南しかいないと。
そして南が自分といて幸せだと思ってくれていたことが何よりも嬉しく、幸せだと思った。
『…ほんなら何とか生きていけそうやわ』
2人の影が静かに重なる。
開けた扉の先に暗闇が待っていたとしても、もう大丈夫。
2人で生きる新しい日々が、眩しい程に道を照らしてくれるから。
おわり
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