挨拶に代えて〜episode P〜
NAME CHANGE
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『私、男に生まれたかった』
仕事終わりに待ち合わせをし、南の顔を見た途端、名前がこんなことを言い出した。南にとっては「またか」という物だった。
『いや、正確には仕事の時だけ男になりたい。変態動物や、変態!』
「…お前、飲んで来たんか?」
『アホか。今日は定時ダッシュですー』
名前は〝女〟という括りに嫌悪感を抱いている。南と付き合い始めた高校生の時からずっとそうだ。
同じ学年で目立つ女子がいた。所謂、爽やかイケメンの男子が好きだということを全面的に出していた。
そんな中、名前と仲の良い友だちがそのイケメンを好きだということが何故か周りに知れ渡った。目立つ女子が「私が好きだって知ってるのに、何で好きになるん?」と、わざわざ本人に言いに来たことがある。何も言えず、泣きそうになっていた友だちを見た名前が立ち上がった。
『何で好きになったらアカンの?』
「何でって…普通、女子なら他の誰かが好きな人って遠慮するやろ?」
『その〝普通、女子なら〟っていうの何なん?ほんなら男やったらええの?人を好きになるのに、女も男も関係ないやんか』
このバシッと言い切った姿を見て南は名前に惚れ、その後付き合うことになった。高校、大学を卒業し、社会人になって5年目になった今でも二人は一緒にいる。付き合い始めてからもう少しで10年だ。
名前は社会人になってから特に〝女だから〟に悩むことが増えた。
お昼は女同士集まって食べる
女がお茶やコーヒーをいれたり、給湯室の掃除をする
会社へのお土産を買う時は、別で女用を買う
あの取引先の担当者はエロいから、面談時は女がスカートで行く
何故そうしなければならないのか。仕事に男も女も関係ない。そう訴えれば訴える程、やかましい、逆に意識しすぎている等と言われ、終いには「アイツは女じゃない」とまで言われてしまった。
さすがの名前もこれには堪えたようで、それ以来言いたいことも言えず、ただ淡々と仕事をこなす日々を過ごしていた。そして溜め込むことができなくなると、こうして南に愚痴を吐くのだった。
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