一厘未満
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人間という世界の中で僕は生きている
悲しみが約9割で 喜びが1割の
見たことも聞いたこともないバンドが、今の私に突き刺さるような歌を歌っている。
まさにそう。
この世は悲しみで溢れている。
さっき、彼氏が知らない女の人と歩いている所を見かけた。
華奢で清楚そうな人の腰に彼氏の腕が回され、横断歩道を渡っているのを見てしまった。あれはどう見たって恋人同士だった。自分とは家で過ごすことが多かったことから、自分が2番手だったことも読み取れた。
このまま家に帰って、あの男に抱かれていたベッドで眠りたくない。
そう思い、何となく入った小さなライブハウスで、全く知らないバンドの演奏を最後列の壁にもたれながらぼんやり聴いていた。
ドリンクは好きなソルティドックでは無く、ブルドックを選んだ。これ以上、しょっぱいのはゴメンだから。
「お姉さん、一人なん?」
声をかけられた方を見ると、涼しげな目元の男の人がいた。あまりの爽やかさに何故か私はムッとしてしまった。
『どうせ一人ですけど、悪いですか?彼氏が他の女と歩いとって、自分の方が浮気相手だったって気付きましたけど何か?』
彼は驚いたように細い目を見開いた。
「えっ、ホンマに?僕も全く同じやねんけど…」
『はいはい、新手のナンパ手法ですか。そういうの要りませんて。とにかく私は今、酒と爆音ロックに溺れたいんですー』
「いやいや、ホンマやって。僕も彼女が知らん男と歩いてんの見てしもて…ほら、証拠の写真もあるで」
彼は携帯で撮った写真を見せてきた。そこに写っていたのは、さっき私が見た光景と全く同じ物だった。
『……この男がさっき言った彼氏やねんけど…』
「ホンマに?!」
こんなことってあるのだろうか。
自分たちがそれぞれの浮気相手側だと同じ日に知り、しかも目立たない地下のライブハウスで遭遇するだなんて。
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