Esteem and Love
NAME CHANGE
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日曜日
待ち合わせ場所に車を停めると名前が既に待っていた。仕事の時とは違いカジュアルで可愛らしい服装をしており、いつもよりずっと幼く見える姿に藤真はドキッとした。
「店の場所、調べてきた?」
『もちろんです!カーナビに入力しますね〜』
二人は名前がずっと前から行きたかった、海岸沿いのジェラート屋に向かった。海が近付くと名前は子どものようにはしゃいでいた。
『うわぁ〜!海がキラキラしてる!見て!藤真さん!』
「運転中だっつーの」
藤真は名前のこのリアクションを見られただけでも来た甲斐があったと思った。
目的地に到着し、二人は海が一望できるイートインスペースに隣り合って座る。
『ん〜、美味しい〜!やっぱりストロベリーにして良かった!最高ですね!疲れが吹っ飛びます!』
「居酒屋のおっさんみたいなコメントだな」
藤真が笑えば名前も笑った。年相応な名前の笑顔に、藤真はホッとした。
その後、海沿いをブラブラと歩いたり気ままに過ごしている内に、あっという間に夜になってしまった。二人は再び車に乗り込む。名前がベイブリッジを渡りたいと言い出し、遠回りして帰ることになった。
『今日はありがとうございました。こんなに楽しいの、ホントに久しぶりでした』
「元気出たなら良かったよ」
ベイブリッジに近付くと、景色が一気にロマンチックになった。時折ライトに照らされる藤真を見た名前は、その整った顔に見惚れてしまった。
「……見過ぎ」
『運転に集中して下さいよ』
橋を越え、車は帰路を辿っていく。沈黙を破ったのは名前だった。
『母がよく言ってたことなんですけど…私は少し年上の人と恋愛した方が上手くいくらしいです』
「何で?」
『私も何でか分からずにいたんですけど…今日、少し分かった気がします』
「……俺もさ、今日分かったことがある」
もう昼に待ち合わせをした場所に着いてしまった。藤真は車を停めて、話を続けた。
「今日は部下のモチベーションアップのためってことで誘ったんだ。でも今日、お前が本当に楽しそうに笑うのを見た時、俺はお前の笑顔が見たかったんだなって思った」
『そ、そんな恥ずかしいこと言わないでくださいよ〜』
照れ隠しでとぼける名前の手に藤真は自らの手を重ねた。手と手が触れ、パチンと乾いた音が車内に響く。
「…分かったんだよ。名前が好きだって」
さっきまで見惚れていた藤真に見つめられ、名前はゴクリと唾を飲み込み頬を赤らめた。
『ふ、藤真さん…今日が〝ストロベリームーン〟の日だって知ってて言ってるんですか?』
「え?」
名前はフロントガラス越しに空を指差した。
『ストロベリームーンを好きな人と一緒に見ると結ばれるって言われてるんですよ』
見上げると、そこにはストロベリーと言う割には赤くもない満月が光っていた。
藤真は握っていた名前の手を強く引き、触れるだけのキスをした。
「…知ってて言ったことにしとく」
そう言った藤真の顔が赤く見えたのは月の光のせいではないだろう。
これからは上司としてだけでなく、新たな関係でも敬意と愛情を注いでいこう…そう思い名前は目を閉じた。
苺の花言葉
「Esteem and Love(尊重と愛情) 」
おわり
ストロベリームーンの夜、敬意と愛を込めて
2020.6.5 ぱこ
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