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それから月日は経ち、木の葉が色付く季節になると、体育館に待ち侘びた声が響いた。
『アホ3人組ー!もっとシャキッとやらんかーい!』
そこに立っていたのは、以前より少し痩せ細った名前だった。紺色のセーラー服に透き通るような白い肌が際立つ。久しぶりの笑顔に、3人の顔も緩んだ。
部活が終わり、久しぶりに4人並んで帰る。
「名前の母ちゃんに騙されたわ。女の涙って怖いな」
「いや、そもそも土屋が早とちりしたんやろ」
「えー、南も岸本も、あの時はそう思ったやろ?僕のせいにせんといて」
3人はすっかり安心しきっていた。しかしその安心はすぐに消し去られる。
『私な、あと1ヶ月しか生きられへんねんて』
「……」 「は?」 「え?」
『ブッ!それぞれらしいリアクションやな』
名前の口元だけが微笑みを無理矢理作り出している。
『もうどうしようもないんやって。だから思い残すことのないようにって退院させてくれてん。でもなぁ1ヶ月の内に絶対にできひんことが1つあんねんなぁ。それだけが惜しいわ…』
「何や?何がしたいんや?俺らで何とかしたるやん!な?!言うてみ?」
岸本は名前の肩を掴み、必死に問いかける。
『…3人で大阪の代表になって、インターハイ出場決める瞬間が見たい』
名前の肩に置かれていた岸本の手がぶらりと離れた。南も土屋も何も言えなかった。
少しの沈黙の後、名前がパチン!と手を叩く音が響く。
『そんな顔せんと!もうどうしようもないんやし、しゃーないやろ…アンタらにそんな顔、似合わへんよ』
霜月の夕陽に照らされた名前の姿は、なんとも言えない哀しさが滲み、胸が締め付けられた。
「── たらええやん」
『え?烈、何て?』
「死んでも空から見といたらええ言うたんや!!!」
名前は驚いた。いつも無表情でクールな南が叫び、目からはボロボロと涙が溢れている。それを見た岸本と土屋も、我慢していた涙を堪えることが出来なかった。
『…分かった、必ず見るわ。約束する。ありがとうな』
この時の名前の笑顔には心からの愛が溢れ、寒空の下、立ち尽くす3人の心を包み込んだ。
まるでひだまりのように。
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