かわいい常連さん
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あっという間に日が過ぎ、今日はもう大晦日だ。大晦日と言えど、チラホラとお客さんはやってくる。
いつもなら土屋さんが来る時間だが、さすがに今日は来なかった。
もうすぐ年が開ける。
家族以外と年越しを過ごすのは初めてだ。店長は毎年こうやって年越しを過ごしているのだろうか…。なんだか変な感じだ。
店長は本部からの連絡がどーので、中に入って行ってしまった。あと数分で年が明けるというのに、私は今、一人ぽつんとレジに立っている。
なんだか寂しいな、と思ったタイミングで自動ドアが開いた。
立っていたのは土屋さんだった。
『…いらっしゃいませ』
「僕な、どうしても今年中にやらなアカンことがあってん」
と言いながら、私の方に真っ直ぐ歩いてきた。
「好きやねん。名前ちゃんが」
『えっ…』
突然の告白に、私は戸惑った。
「名前ちゃん、大学の写真展に作品出してたやんな?」
私は趣味で撮っている写真をたまたま募集があった大学の写真展に提出し、それが展示されていたのだ。まさかあの写真を見てくれていたなんて…。
「僕な、あの写真を見てめっちゃ感動してん。こんな可愛らしい写真、どんな人が撮ったんやろうって。周りにめっちゃ聞きまくって、やっと名前ちゃんを見つけてん。あの写真の花みたいに、ふわふわで可愛らしくて…気付いたら好きになってしもて。でも声かけよう思てもなかなかできんくて…そしたら、ここでバイトしとること聞いてん」
だから毎日のように来ていたのか…。全く気付いていなかった私は、ぼんやりとしか接客していなかったな…と思うと、急に恥ずかしくなってきた。
「どうしても今年中に言いたかってん。ほんで返事も今年中に欲しいねん」
『えっ…今年って…』
「あ、もう明けてまうで!8、7、6…」
『わ、分かりました!あの、よろしくお願いします!』
ぺこりと頭を下げると、土屋さんは「ホンマに?!」と子どもみたいにはしゃいでいた。
「あ!名前ちゃん!」
『は、はい!』
「明けましておめでとう!」
そう言った土屋さんの笑顔を、私はやっぱりかわいいと思ってしまうのだった。
新しい春の訪れ
(あの、土屋さん…ホンマに私なんかで…)
(あ!今年初めて名前呼ばれた!姫初めや!)
(ひめ…)
おわり
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