挨拶に代えて
僕たちが出会ったんは、高校生の時でした。彼女の気が強くて女々しくない所に惹かれ、僕から交際を申し込みました。
彼女の良さである気の強さは、時に仇となることもあります。特に社会に出てからは、言いたいことも言えず、飲み込む日々が増えたように思います。その方が傷付かないし、傷付けないからです。
僕はその気持ちが痛い程分かります。高校の部活動で自分を抑え込み、もがき苦しんだ経験があるからです。
あの時の苦しみは今でも時々思い出します。そんな時、彼女は何も言わず寄り添ってくれ、目の前に転がっている幸福に気付かせてくれます。ちなみに大人しいのはこの時くらいです。
ここに至るまでに、僕たちは色んな選択肢にぶつかってきました。たくさんの物を切り捨て、それらを踏み台にし、最後に残った物が今日という日です。今、彼女が身につけている物も、腹が立つ程、時間をかけて選びました。
そんな彼女も、たまにはアホみたいなこともします。
最新ネタとしては、友人の岸本くんと酔っ払って、串カツが旨すぎて串カツになりたいと言い出し、店のソースに手を突っ込もうとしていたことがあります。大丈夫や、二度漬けなんてヤボなことはせぇへん!と、しょーもないことを言っていました。
そんな彼女を見ていると、僕はやっぱり選択肢を間違っていなかった、と思えます。
最近は、良かれと思ってしたことが、余計なことになってしまうことが多い時代やなと思います。でも僕たちはそんな時代を生きていかなければなりません。
皆さんも御察知の通り、僕たちはこれから先も意見が合わなかったり、言い合いになることが多いと思います。それでも、彼女が感じる生きづらさを僕が全部受け止め、選んだ末の人生を2人で生きていきます。これが嘘になった時、僕は命を捧げても構いません。アホちゃう、と言われても屁でもありません。
僕は気の利いたことも言えないし、甘い愛の言葉なんて思いつきもしません。
だから僕が思う全てをここに記し、いつまでも彼女に捧げます。
最後に、僕を選び、結婚してくれてホンマにありがとうございます。
新郎挨拶 南烈
(アンタ…人生の晴れ舞台でとんでもないこと言うたな!)
(じゃあ何で泣いてんねん)
(南ぃ〜!最高の挨拶やったで!)
(岸本…何でお前が一番泣いてんねん)
おわり
96年のヒット曲でSD小説を書いてみた
企画提出品
Mr.Children「名もなき詩」(一部歌詞を引用)
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