甘い放課後
放課後の教室。
向かい合って日直日誌を書く男女二人。
少し冷たい秋の風にカーテンがなびく。
告白には、打ってつけのシチュエーションだ。
「なぁ」
『んー?』
視線を送る南と、目線を日誌から離さない彼女。
「いつなったら俺と付き合うてくれんの?」
『んー…そうだなぁ……阪神が優勝したら?』
「もう二位決まっとるやん」
『あー、そうなんや』
南は自分を揶揄っているだけだと彼女はいまだに思っているが、当の本人は至って真剣なのである。ただ彼があまりにもそういうキャラだと想像できないため、どうにも伝わっていないようだ。
「どーしたら信じてくれるん?」
『えー…だって南モテてるよ?なんであたし?どこがええの?』
「まず…」
『待って!やっぱええわ。ごめん今のナシで』
自分で言っておきながら恥ずかしくなってしまい、思わず止めてしまった。
『南さぁ、ほんまもう揶揄わんといてな。南ファンの子たちの視線が痛いねんて〜』
そう言いながらペンを置き、顔を上げると真剣な眼差しが刺さって彼女の動きは一緒で止まる。
「俺、今日誕生日やねん」
『へ…?そ、そうなん?』
「好きな子と一緒に日直、しかも誕生日にやで?浮かれんなって言われる方が無理やろ…」
みるみるうちに南の顔は真っ赤になっていき、今度は子犬のような目に変わる。
『ほんまに好きなん…?』
「ほんまに好き」
『えっと…考える時間ください。検討します……前向きに』
彼女の言葉に表情が緩む南はいつものクールな印象と違って見え、何だか愛おしいと思える感情に彼女は戸惑う。
『南』
「ん?」
『誕生日おめでとう』
「…っ……お前…それは反則やろ…」
『え?何がよ?誕生日なんやろ?』
「ほんまそういうとこ、めっちゃええと思うわ…」
彼女が知っている南のキャラがどんどん崩壊していく。こんなにも愛を言葉にしてくれるのは意外すぎて正直ギャップにやられてしまいそうだった。
『もー!ほんまに恥ずかしいって!はい、終わり!さぁ日誌出して帰るで!』
「一緒に帰ってくれるん?」
『帰ったるわ!!なんぼでも!』
なんだか南のペースに乗せられてしまった気がするが、誕生日だから良しとしよう。彼女はそう考えながら、職員室に向かって歩き出すのだった。
甘い放課後はまだ終わらない。
おわり
Happy Birthday Minami-kun. I want to see you being spoiled sometimes...♡
2024/10/15 ぱこ
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