初恋が染まる日
14年前
中学生だった南は、部活が無い日はこの公園でよく岸本とバスケをしていた。
ある日、暗い顔で公園のベンチに座る同じクラスの女子を見つけた。
「何してんねん」
「親にやらされてる習い事に行きたないから、サボってんねん」
「ふぅん…あっちでバスケしとるけど、見るか?」
彼女は南たちがバスケをするのを見て、凄い!かっこええな!と喜んでいた。
それからというもの、何となく彼女も一緒に公園で過ごす日が続いた。南はどんどん彼女に惹かれていき、ごく自然と交際することになったのだった。
初めての恋人は、口元のホクロと笑った時の八重歯が印象的な女の子だった。
南は彼女のことが大好きだった。どんなに些細なことでも、彼女が笑えば心の底から嬉しかった。
夜になると彼女を想い、自身を慰めることも多々あった。それでも満たされない南は、この想いを文字に書き出してみたのだった。
気付けば「ラブレター」が出来ていた。
翌日、彼女にラブレターを渡した。彼女を想い、何度も自身を慰めたこの手で書いた手紙を、何の躊躇もなく受け取る彼女を見ると、急に罪悪感に襲われた。
「それ1回読んだらすぐに捨ててや」
「何でよ。もったいない。めっちゃ嬉しい」
そう言って柔らかく笑った彼女の顔を、南は今でも覚えている。
手紙に綴った「愛してる」という言葉は、中学生の2人にとって、大人びた響きで特別な言葉に思えた。その言葉だけで、恐れるものは何もないと思えた。
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