初恋が染まる日
3月末、大阪は桜の花が咲き始める穏やかな季節を迎える。南は久しぶりに地元に帰省してきた。
大学を卒業し、そこそこ大手の会社に就職したまでは良かったが、そこから先は毎日が目まぐるしく、気付けば今年28歳になる。
3月は会社の年度末にあたり、有休消化率アップのために無理矢理休みを取らされた。
朝起きて会社に行き、家では眠るだけの毎日に疲弊していた南は、旅行に行くなんぞ考えつきもせず、何となく地元に帰って来たのだった。
駅から真っ直ぐ帰るのも味気ないと思い、フラフラと少年時代を過ごした街を歩くことにした。こんなにゆっくりと景色を見ながら歩くのは随分久しぶりだった。
(あ、駄菓子屋無くなっとるやんけ。そういえばあの時、岸本のアホが…)
と、昔の記憶を思い出し、こっそり楽しんでいた。
少し進むと、バスケットコートのある公園に着き、自然と足が止まる。
(ここは…)
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