金木犀が香れば、
私には好きな人がいる。
大学の授業でたまに同じグループになったりするため、向こうも私を認識はしている。ただ本当に存在を知られているだけで、連絡先を交換するような仲ではない。
彼のことは入学した時からかっこ良いなと思っていた。人を寄せつけなさそうなのに嫌われてはいなくて、時々友だちといる時に見せる笑顔にやられてしまった。
自分から何かアクションを起こしていないのだから、当然何も進展はないまま夏休みに入ってしまった。大学の夏休みってやつは約二ヶ月間あり、友だちと旅行に行ったりバイトで稼ぎまくるにはもってこいだったが、やっぱり好きな人に会えないのは寂しかった。
そして夏休みも終わりに近付いた九月末、バイト帰りに通ったお店に金木犀の香りがする商品が並ぶコーナーを見つけた。金木犀の香りは元々好きで、シャンプーや芳香剤もその香りがする物を使ったりしていたが、今年はどうやらこれが流行しているらしい。お店に金木犀の写真が飾られていて、こんなビジュアルをしていたことを初めて知る。
その後、好きと言う割に何も知らないなと思った私は、金木犀のことを調べてみた。そして、十月十五日の誕生花であると知る。その時はへぇ〜そうなんだ…くらいにしか思わなかった。
まだ秋なんて少しも感じられない中、金木犀の香りがするハンドクリームを買い、夏休みを終えた。
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