Imprint
それから少し経ち、今月の展示会が催された。観に来てくれる人たちがどのくらい写真に興味があるのかは分からないが、大抵は友だちやクラスメイトのよしみが多い。
私が見張り当番になった時にはもうほとんど人は来なくて、先輩たちの作品をじっくり見ていた。
「おっす」
『あ、水戸くん。来てくれたんだ。ゆっくり観て行ってね』
同じクラスの水戸くんはいつも展示会を観に来てくれる。ヤンチャしてるとは聞いているけれど、こういうの興味あるんだなぁというのが正直な感想。
早速一番端にある私の作品を見ている。そして途端にハハッと笑い出した。
「これ、俺だわ」
『え゛?!うそぉ?!』
なんと私があの日見た人影は水戸くんだったらしい。水戸くんは困ったように笑っている。シルエットだけで誰なのかは分からないようにはなっているものの、もしかしてマズかっただろうか…。とりあえず謝った方が良いのか…?
混乱して何も言えずにいると、水戸くんはタイトルの札にプリントされた〝黄昏の放課後〟を指差しながら言った。
「黄昏か…」
『あ…ごめん…そういう感じじゃなかった…?』
「いや…ある意味そうなのかもしれねーけど、どっちかっつーと…
〝恋焦がれ〟
かもなぁ」
『えっ…』
「…いつも放課後になるとゴツいカメラ首からぶら下げて、一生懸命何かを探してる子に気付いたら夢中になっちゃってたんだよなぁ」
ん…?え…つまりそれって……。
「考えといて」
『へ?!』
「いや、タイトルをさ」
水戸くんは悪戯っぽく笑ってそう言い、部屋から出て行ってしまった。
〝恋焦がれ〟
たった五文字の言葉が身体中を駆け巡り、心臓がバクバク動く。まるで電源を入れられた機械みたいに。
ふと自分が撮った写真を見ると、さっきよりもずっと色鮮やかに見えるのが不思議だ。
今度はカメラのレンズ越しじゃなく、自分の目に焼き付けたい。
その時は、きっと──。
おわり
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