まるまる
NAME CHANGE
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名前の部屋まで来てインターホンを押すが応答が無い。もう寝てしまったのだろうか。一応、合鍵はあるが疲れているだろうしそもそも自分が何の連絡も無く勝手に来ただけであって…。
この歳になって、衝動的に行動してしまえる自分がいたことに正直驚いた。冷静に考えると急に恥ずかしくなってきて、やっぱり今日は帰ることにしようと歩き出した時、バタバタと音がしてドアが開いた。
『ごめ…寝ちゃってて…。どうしたの、こんな時間に』
着替えずに寝ていたのかシャツは皺になり、メイクもよれた名前を見て何だか込み上げてくるものがある。
「…連絡来た時、俺も同じこと思っとって…気付いたら電車に飛び乗っとって…その…」
甘い恋愛ドラマのような言葉を発する自分が気持ち悪い。でも本当にそう思ったからここに来たのだ。
名前はポカンとしつつ携帯を取り出し、自分が送ったメッセージを確認し始めた。
『えっ…!うぁ…週末会える?って送ったつもりだったのに……疲れすぎて記憶ない…ごめん……って…あ!日付変わった!!』
そう言うと彼女はいきなり俺に抱きついてきた。突然のことに頭がついていけない。
「ど、どないしたん…?具合悪いんか…?」
『烈……誕生日おめでとう…!』
「へ…?!」
思わずアホみたいな声を出してしまったが、日付が変わったということは10月15日になったということで、つまり俺の誕生日になったということだ。しかし今の今まですっかり忘れていた。
『私…何も用意できてなくて……でも今日になった瞬間に会えたのが嬉しいよぉ〜』
名前は俺の胸に顔を埋め、さっきよりも強く抱き締めてきた。ボサボサの髪が愛おしい。
「その気持ちだけで十分や。ありがとうな」
『私の方こそ…いつもありがとうね』
「…今日このまま泊まってってええか?」
『え、ホント?!もちろん!』
名前がこんな風に全力で尻尾を振る犬のように俺を見つめる姿を誰が想像するだろうか。
そんな子が二人っきりの時だけ見せる表情とか堪らんやろなぁ。
従兄弟の言葉が頭をよぎる。
そうやで。こんな可愛い名前は俺しか見られへんのやぞ。
寝起きでぽかぽかと熱を帯びる手に引かれ、部屋に入る。玄関のドアが閉まった瞬間に唇をそっと重ねた。
「…贅沢な誕生日やなぁ」
『え?なぁに?』
10月15日を、まるまる24時間一緒に過ごせるんやからな。
おわり
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