動き始めた恋模様
NAME CHANGE
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
だいぶ大学の方まで来ると実理がタイミング良く向かい側から歩いてきて、私の脚は止まる。息を整えている間、実理は気まずそうにしながらも待ってくれていた。
『実理…私……私な…!』
「いや、悪いのは俺の方や。スマンかった。調子乗っとったわ」
『…っ……ちゃうねん。そうやなくて…』
私は胸の前でギュッと手を握り、土屋くんに貰った勇気を振り絞る。
『私、実理が好きやねん…!せやから……実理が悲しむの…見たない……』
最後の方は声が擦れていたが、何とか言えた。実理は驚いたような表情で立ち尽くしている。
「…そーか。なるほどなぁ…合点がいったわ」
『…どういうこと?』
「お前が俺を好きっちゅーのは想定外やったし、正直今めっちゃ動揺しとる。でも…やっぱ小山さん……土屋のことばっか見とるよな…」
実理の言葉に今度は私が動揺してしまう。
『…気付いてたんや。ほな何であんなに浮かれとったん…?』
「…お前らに頼み込んで一緒に飯食うたのに、凹んでたら悪いやろ」
実理は全部気付いていた。その上であんな振る舞い、いやフリをしていたのだ。私も合点がいった。だって実理はそういう奴だって知ってるから。
実理が好きで、ずっと隣りにいたいと思っていた。それなのに、どうしてこんなにも虚しいのだろう。
涙をこぼすと実理が困る。そう思い、ぐっと感情を押し殺すことしか出来ない。少しの沈黙がとても長く感じる中、実理が声を発する。
「お前見とったら俺も何や勇気出てきたわ」
『え…?』
「…俺も、気持ち伝えてみるわ」
実理の目は真剣そのものだった。それなら…
『頑張れ…私、待っとるから』
「…おう!」
実理はいつものようにニカッと歯を見せて笑い、そのまま駅の方に向かって行った。今日はバイトだと言っていたから、きっと…。
私の、いや、私たちの恋が向かう先は誰にも分からない。
影が長くのびていた。
続く