夏の余韻
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それからは予備校で他に知り合いがいない者同士、何となくいつも隣りの席に座るようになっていて、少しずつ名字さんのことを知っていった。
前に住んでいた所の話を聞いたり、大阪の事を教えたりした。
俺の似顔絵を描いて笑わせてくれることもあった。
そして、真剣に講義を聴く横顔が綺麗で見惚れることもあった。
柄にもなく、毎日が楽しかった。しかし夏期講習ってやつには終わりがある。それは名字さんともう会えなくなることを意味していた。彼女に好意はあるものの、それが人間としてなのか恋愛感情なのかは正直まだ分からない。けれどこのまま関係が無くなってしまうのは嫌、というか寂しい気がする。そういう場合、何と言うべきなのか…口下手な俺にはよく分からない。
しかし、そんな俺にもラストチャンスってやつが訪れたのだ。最終日の講義終了後、予備校の裏手で花火をするというのだ。もちろん強制参加ではない。その話を聞いた後、名字さんが帰る準備をしながら話しかけてきた。
『花火かぁ…最近全然やってないなぁ〜。南くんは参加…しないよね…?』
俺がこういうのに参加しないタイプだと思っての言葉だろう。しかしどうやら名字さんは花火をしたいようだった。これを活かさずにはいられないだろう。
「いや……参加しよかな。勉強ばっかでおもろいこと無いしな」
俺がそう言うと、名字さんの表情はパーッと明るくなった。
『ホ、ホントに?!じゃあ私も参加しちゃおうかな!』
まるで尻尾を全力で振る子犬のように嬉しさが全面に出ていて、思わず笑いそうになってしまう。しかしグッと堪え、俺は「ほな花火しようや」とだけ言った。ガキじゃあるまいし、もっと素直になっても良いのに…なんて家に帰ってから考えてしまった。
俺ってこんな奴だったか…?
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