Rabbit-shaped Apple
NAME CHANGE
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それからと言うもの、名前はとにかく深津の観察を始めた。
時には教室の窓から、時には中庭から、時に体育館の観覧席から…。
全ては、あの微笑みがもう一度見たいがためだった。しかし、深津はいつ見ても表情を変えることは無かった。
ある日、名前はとある計画を立てた。それは、深津の行く先にうさぎ林檎を置くことだった。あのうさぎ林檎を見て深津は微笑んだのだから、きっとまた…という何とも安直かつアナログな作戦だった。
放課後、体育館へと続く渡り廊下に切った中で一番可愛く出来たうさぎ林檎をセッティングし、名前は近くの茂みに身を隠す。そしてすぐに深津がやって来たことに気付き、息を潜めた。練習着姿も格好良い…と見惚れていると深津が林檎に気付いたのか足を止め、ジッと黙って見ている。
さぁ!もう一度あのステキな微笑みを…!
名前が心の中で大絶叫を決めた途端、深津の首が90°横を向き、すぐに名前が隠れる茂みに向けられた。
「そこで何してるベシ」
どうやら深津は名前がいることに気付いていたようで、名前は頭に葉っぱをつけたままおずおずと出てきたのだった。
『何で隠れてるって分かったんですか?!』
「まる分かりだったベシ。何ならいつも見られてることも気付いてたベシ」
こっそり見ていたつもりだったが、それさえも深津にはお見通しだったようだ。バレていないと思っていた名前は急に恥ずかしくなったものの、これはチャンスだと意を決した。
『私…深津先輩の笑顔が見たくて…』
あまりの恥ずかしさに少し俯きがちにもじもじと言ってしまった。そんな可愛らしい仕草に男子高校生ならば一撃ノックアウトのはずであろう。しかし、深津には一筋縄ではいかないようだった。
「笑うことなんて年にそうないベシ」
『で、でも忘れられないんです…初めてお話した時に先輩笑ってくれたじゃないですかぁ…』
そう言うと深津は少し黙って何か考え、次に発せられた言葉はこうだった。
「じゃあ気が済むまで見てたら良いベシ。コソコソする必要なんて無いベシ」
『ホ、ホントですかっ?!』
名前が歓喜の声を上げると深津は頷き、足元のうさぎ林檎を拾い上げた。
「これは練習後に頂くベシ」
『は、はいぃぃぃ…!』
まさかの急展開に名前はキャパオーバーになっていた。早起きして一生懸命切ったうさぎ林檎があの深津の手の上にある…。その光景を目に焼き付けようと、見えなくなるまでその場を動かなかったのだった。
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