カーディガンに乙女心を包んだら
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日影の少ない道を歩いている時だった。急にフラッとしたかと思うと立っていられなくなり、私はその場にしゃがみ込んでしまったのだ。
「おい、どうした?大丈夫か?!」
『…ごめ…大丈夫…。ちょっと休めば平気だから…』
「立てるか?とりあえず横になれそうな所に行くぞ」
『……』
私は身体を支えて貰いながら立ち上がり、藤真くんに連れられて来たのは近くのビジネスホテルだった。そして藤真くんは私をベッドに寝かせると、首や脇にペットボトルの水を当ててくれた。身体が冷えてくると楽になりそのまま眠ってしまったようで、目が覚めた時には空は夕焼けになっていた。藤真くんはと言うと、椅子に座ってテレビを観ていたようで私が目を覚ましたことに気が付くとすぐに横に来てくれた。
「大丈夫か?」
『うん…ありがとう。それより本当にごめんなさい…。せっかくのデートが…』
「ったく…体調悪いんなら早く言えよな。心配するだろーが」
『…ごめんなさい』
全てはこの腕のせい…そう思いながら触れると自分がカーディガンを着ていないことに気が付いた。そうか、藤真くんが脱がせてくれたんだ…。
『…腕、見た?』
「見た。どうしたんだよ、それ」
『ちょっと会社でぶつけちゃって…』
「もしかしてそれを見られたくなくて隠してたのか?バカじゃねーの。そんなの生きてりゃ誰だってあるだろ」
藤真くんは呆れたようにそう言った。そうだよね。変に隠してデートを台無しにしちゃったんだもん。こんなんじゃ嫌われちゃうよね…。
『ご…ごめんなさ……』
謝り掛けた所で藤真くんがいきなり私を強く抱き締めた。えっ…待って…何?ホテルだし、二人きりだし、ベッドだし…!!
軽くパニックになっていると、藤真くんはそのままの体制で話し始めた。
「名前に何かあったら…ぜってー耐えらんねーわ…」
囁くような甘い声にときめきと申し訳なさがこみ上げてくる。胸の奥までギューッと抱きしめられているような気がした、
「…今日、このまま泊まるか?」
さっきと同じトーンだが、少し遠慮したような声で藤真くんがそう言った。
『えっ…と……』
こ、これは…お誘い……?心配……?
たぶん考えていることが顔に出てしまったのだろう。藤真くんはプッと吹き出し、私の頭にポンッと手を置いた。
「バーカ。体調悪い奴に手出すかっつーの。それに…そういうのはやっぱ大事にしたいからな」
真剣な顔で見つめられながらそんな事を言われると、もうお手上げ状態だ。そしてこんな風に大切にして貰えていることが素直に嬉しい。
すると藤真くんの顔が近付いてきたのが分かり、途端に目を閉じた。そして柔らかい唇が触れたのは…額だった。
「今日はこれくらいで……な?」
唇では無かったことが少し残念だったけれど、藤真くんが照れているのが分かり、それが何だか嬉しかった。
『藤真くん、ありがとう。大好き!』
二回目のデートは、藤真くんをもっともっと好きになれた大切な思い出になった。いつか今日のことを笑って話せたら良いなぁ…。
藤真くんの肩越しにテーブルの上の無作法に置かれたカーディガンが見える。
何だかとても愛おしかった。
おわり
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