二回目のランチタイム


お弁当の蓋を開けると流川くんは小さく「うまそう…」と言った。さすがにこの量を半分にしたんじゃ足りないだろうから、お弁当は流川くんに食べて貰おう。そう思った私は、引き出しに入れていたカロ○ーメイトを取り出す。


『私はコレ食べるから、流川くんお弁当食べて良いよ』

「いや…さすがにそれは悪いっす…」

『いいのいいの!最近ちょっと体重気になるしさ』

「でも…」

『ほら、二の腕とかヤバいし』


腕を上げて二の腕を揺らすような仕草をすると、咄嗟に流川くんが私の腕を掴んだ。


「…これ以上細いとすぐ折れるっす。気にしなくて良いと思う。それに脂肪はある程度必要」


大きな手が軽々と私の腕を持っていて、急に男性なんだと意識してしまう。


『そ、そんなことないよ!さ、お弁当食べて?時間無くなっちゃうよ?』


明らかに動揺を隠せないリアクションをしてしまった。流川くんに変に思われたらどうしよう…。


「…ふっ……じゃあいただきます」


あれ?今一瞬笑った…?後輩の男の子に笑われる…のは良いとして、流川くんが笑った顔を初めて見たかもしれない。

……と、ときめいてしまった…!

そんな心情を悟られまいと、平然とカ○リーメイトの袋を開ける。チラリと流川くんを見ると、美味しそうにお弁当を頬張っていた。

いつも掴みどころが無くてどんな人なのか分からなかったけれど、こうして見ると年相応の若い男の子なんだなぁ…。


「先輩」

『へっ?!』

「…見過ぎ」

『…っ……ご、ごめんっ!』


これが私たちの初めてのランチエピソードだ。それからまだ何日か経っていないのだが、何だか妙に楽しくて至福の時だと思ってきた普段のランチタイムが少し物足りないような気がしていた。人間ってなんて欲深い生き物なのだろう…。そう思っていると、ちょうど昼休みを告げるベルが鳴った。少しずつ皆出て行き、気付けば部屋には私と流川くんだけになっていた。




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