二回目のランチタイム
ランチの時間になると周りは皆外に出て行き、それまで殺伐としていた事務所がウソみたいに静まり返るというギャップの中、ひっそりとお弁当を食べる時間が密かな至福の時間だったりする。
そんなある日、お弁当を食べる前に手を洗って部屋に戻ると後輩の流川くんがボーッと座っているのが見えた。
『流川くん、お昼行かないの?』
「…財布、忘れたっす……」
本来なら悲しむとか笑うとか何かしら感情を露わにしても良い場面のはずなのに、流川くんは表情一つ変えず淡々とそう言った。特に困っている様子も無いし、一食食べなくても死なないだろうとその場を立ち去ろうとしたその時、グゥ〜キュルルルル…と漫画の効果音のような音が響いた。そう、流川くんのお腹が鳴ったのだ。流川くんはお腹に手を当て、少し恥ずかしそうにしていた。その姿が子猫のように見えて、母性本能をくすぐる。
『よ、良かったら私のお弁当分けようか?』
お金を貸すという選択肢もあったはずなのに、私の口から出た言葉はこうだった。感情が動いている時ってどうしてこうなんだろう…。そんな私の言葉を聞いた途端、流川くんはパッと顔を上げ、コクコクと頷いていた。もう取り消しは出来なさそうだ…。
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