土曜日の夜


そんな日々からあっという間に二年が過ぎ、休日出勤している三井さんのために私は夕飯を作っている所だ。今日は頑張った三井さんの為に大好物のハンバーグを作ってあげるんだ。

よし、もう一品何か作っちゃおうかな…。そう思い、菜箸を手に持った時だった。

ほんの少しキッチンにぶつかっただけなのに、菜箸の先がまるで切られたかのようにスッパリと折れてしまったのだ。それを見た私の鼓動はドクドクと速くなっていく。なぜなら、これまで食器類がどういう形であれ割れると、恋人との別れがやってきたからだ。

珈琲カップを落とした時、浮気されて別れた。

お椀を使おうと棚から出そうとした時、縁が欠けている事に気付いたと思ったら、もう疲れたと出て行ってしまったこともある。

いや、そんなまさか…ね…。

私の気持ちは付き合い始めたあの頃と変わっていない。三井さんのダメな所も分かってるし、それも踏まえて好き。

じゃあ、私のダメな所は…?

三井さんが好きでいてくれるって、胸を張って言える…?

二度あることは…って言うよね…?


突然不安に押しつぶされそうになり、思考も身体の動きも止まってしまい、折れて落ちた菜箸の先をただ黙って見つめることしか出来ない。

温かいものが頬を伝っていく。

どうしよう…怖いよ…。

手をギュッと握り締めた時だった。




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