土曜日の夜


土曜日の夜は私にとって、とても大切な時間だ。

まだ学生だった頃、私は学校が終わると映画館でバイトをしていた。夜になると時給が上がるため、夕方から閉館までいるのがお決まりだった。特にレイトショーの時間は人も少なく、満席になることはほぼ無いためあまり忙しくない。そして何より、ゆっくりと映画を楽しみに来るお客さんの雰囲気が好きだった。

私は土曜日のレイトショーの時間はチケットもぎりの担当をしていた。そして、毎週土曜日に来るお客さんが気になっていた。それが今付き合っている三井さんだ。

当時は映画好きな人なんだなぁと思っていたけれど、後から聞くと私に会いたかったから毎週来ていたそうだ。そして三井さんから声を掛けて貰ってからよく話すようになり、私が就職活動をするため今日がバイト最終日という時に告白されて付き合うことになったのだった。告白された頃には私も三井さんの事を好きになっていたため、とても嬉しかったのを覚えている。

付き合い始めの頃、三井さんの職場の話なんかを聞くと自分とは全く違う世界を生きている気がした。だから何かを求めたりするのは子どもっぽいと思われる気がして、嫌われたくなくて彼に見合うように背伸びをしていた。


「もっと頼ってくれよ…俺ってそんなに頼りねーか?」


困ったようにそう言いながら三井さんは私を強く抱きしめてくれた。纏っていた鎧がボロボロと剥がれるように、私の目から涙が溢れた。それをキッカケに、お互い包み隠さずいられるようになり、今となっては支え合えているなと実感出来る日々を過ごしている。




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