チョコの無いバレンタイン
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『ほらほら、突っ立ってないで座って。今何か飲み物持って来るからさ』
先輩はそう言って冷蔵庫の中を覗き込み、俺はとりあえずテーブルの前に腰掛けた。先輩が小柄だからなのか全部が小さく見えてしまい、どうも落ち着かなかった。そしてテーブルにはガラスのコップに注がれた烏龍茶が出され、ここで何とかティーとか何とかオレを出してこないのが先輩らしいと思った。少しホッとした気がして烏龍茶を口に含むと、今度は何やら控えめに飾られた小さな箱が出てきた。
『はい、これ』
「…何?」
『何ってバレンタインやろぉ?せっかく恋人になったんやからこーいうイベントごとは楽しまんとね』
何の恥ずかしげも無く先輩はそう言い、可愛い笑顔でこっちを見ている。何だか自分ばかり変に緊張していたことが本当にダサく感じ、またしても情けなさに押し潰されそうになった。
「開けてええ?」
『ええよ』
箱を持つと妙に軽いことに違和感を感じたが、俺は包装紙を剥がしていった。そして蓋を開けると中にはチョコは入っておらず、カードが一枚入っているだけで、そこには〝願い叶えたる券〟という文字が書かれていた。どういうことかよく分からず先輩の方を見ると、少し恥ずかしそうに言った。
『南は甘い物苦手って聞いて…せやから何か一つ願い事聞いたろー思て…な』
苦手とは言え食べられない訳ではないし、先輩から貰えるなら嫌いな物だって食べられる。しかしこれは俺を思ってのことだと思うと途端に愛おしくて堪らなくなり、俺は先輩を思い切り抱き締めていた。
『み、南…?』
「先輩にはずっとそのまんまでいて欲しい。これが俺の願いや」
『えっ…そ、そんなんでええの…?』
「そんなんて言うなや」
『いやだってもっとこう…エッチな事とかお願いされるかと…』
普段あまり動じない先輩だが、少し焦っているのが分かった。もしかして期待してたのは俺だけじゃ無かった…?
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