Engraved



「緊張しとるん?」

『…うん』

「…可愛えな」


唇をこじ開けられるのを合図に、私は彼に身を委ねる。彼の柔らかい唇と舌が気持ち良くてずっとこうしていたいと思ったから。そして彼の手が胸の膨らみにやわやわと触れた。


『んんっ……んぁ…』


自分の声では無いのではないかと思えるくらい甘い声が鼻から抜けていく。チュッチュッと音を立てながら色んな所にマークされ始めると彼が私の手を持ち、下半身の膨らみに導かれた。

下着の上からでも熱を帯びているのがよく分かる。全体を撫でるように掌で擦ると少しだけピクピクと反応してくれるのが嬉しい。そして彼が下着を下ろし、熱を帯びたモノが露わになる。前の彼氏よりもずっと大きくて、こんなのが自分の中に入ってくるのかと思うと少し怖かった。


「触ってや…」


いつもより彼の声や表情に余裕が見られない。こんな顔するんだ、なんてつい考えてしまいつつ私は言われるがまま彼に触れた。と言っても久方ぶりに見たそれをどう扱うべきなのか分かっておらず、確かこうすると良かったような…と手探り状態だった。


「…っ……ちょ…強いわ。もーちょい優しゅうしてや。こう見えてデリケートやねんで〜」

『ご、ごめんっ…!人によって違うんだね……』


自分で発した後、言葉の選択を間違えたと思った。でもそれはもう遅くて、彼が私の手首を掴む方が速かった。


「…前の男に教えて貰た触り方とは屈辱的やなぁ」

『…っ……ごめ…なさ……そんなつもりじゃ…』


嗚呼ダメだ、泣きそう。こんな事を言われて怒らないはずが無い。嫌われたかもしれない…。頭の中でグルグルと考え、言葉が出ずにいるといきなり彼が額と額をピッタリくっつけてきた。少し上目使いがちな彼の顔が目の前にある。


「そないな顔すんなや」

『だってぇ…実理に嫌われたら私……』

「アホ。んなことで嫌いになるか。寧ろ好都合っちゅーもんや」


彼は額を離し、今度は耳元に顔を近付けた。そして息を吹き掛けるように言う。


「俺のええようにしか出来ひんようにしたるからな」


声、吐息、言葉、全部に身体がゾクゾクと反応する。肩が震え、お腹の奥がツンとするようなそんな感じがした。


『…っ……えっち…』

「何とでも言え」





.
2/4ページ