Engraved


雑貨屋さんで見つけた変な帽子を被り、おちゃらけて笑わせてくれる彼が好き。

映画を見ている時、急に繋がれた手が大きくてドキドキした。横を見ると知らん顔でスクリーンを見続ける横顔がかっこ良くて、映画の内容はよく覚えていない。

魚が苦手な私のためにと選んでくれた洋食屋さんでのディナーはほっぺたが落ちるくらい美味しくて、夢中で食べる私を見て目を細めた顔にキュンとした。


そして今、ラブホテルの一室で先にシャワーを浴び、着させられている感満載のバスローブ姿でベッドに座る自分の姿がすぐ近くの鏡に映っている。実は、彼とするのは今日が初めてだったりする。そして私は大学生の時に一人だけお付き合いをした人に処女を捧げて以降、その人しかしらない恋愛初心者なのである。

彼がシャワーを浴び終えて浴室から出てくる音がする。初めてな訳でもないが小慣れ感なんて出せるはずもなく、ただギュッと手を握りしめて座っていることしか出来ない。

そして同じくバスローブ姿の彼が目の前に現れた。少し濡れた髪、見え隠れする鎖骨や脚の筋肉が色っぽくて目のやり場に困ってしまう。


「おいおい…そない縮こまらんでもええやんけ」


彼が私の隣りに座ると、ベッドはギシッと音を立てた。そして自分が使ったボディーソープと同じ香りに包まれる。あっという間に視界は彼だけになる。




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