春、見つけた。

春、見つけた。(越野ver.)

オーバーパスでボールが体育館の外に出てしまい、拾いに行く。

今日は珍しく仙道が遅刻せずに部活に来た。温かい日差しがさす陽気だが、雨どころか槍が降ってくるかもしれない。

三年になってようやく自覚が出てきたのかと一瞬思ったが、そう単純な奴ではないことは重々承知だ。

空を見上げていると、ついボールを見失ってしまった。植え込みの中をかき分けても見あたらない。


『あの…これ…』


ふと背後から声を掛けられ、振り返るとボールを持った女子がいた。見慣れない顔だから、別の学年の子なのだろう。


「あー、ありがとう。助かった」


ボールを受け取り体育館に戻ろうとすると、その子が少し大きめの声で話し始めた。


『あ、あのっ…バスケ部の越野さんですよねっ?!去年の決勝リーグ観てました!かっこ良かったです!今年も頑張って下さいっ!』


ペコッと勢い良く頭を下げ、その子は走って帰って行った。


春、見つけた。


見てくれてる人っているんだなぁ…。次の試合のシュートはあの子に捧げようと、そっと心に決めたのだった。



おわり

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