春、見つけた。

春、見つけた。(藤真ver.)

高校三年になり、クラスのメンバーは変わらないが早々に席替えがあった。

運良く俺は最後列の端の席だった。隣りはあまり話した事がないが、他の女と違って俺を見てもキャーキャー騒がないタイプの奴でラッキーだ。

昼休みになり、花形たちと部室で弁当を食おうと立ち上がると、隣りの子がちょうど弁当の蓋を開けるところだった。何気なくそれが目に入り、見ると美味そうなおかずがたくさん入っていた。


「…うまそーだな」


思わず声に出してしまうと、彼女は嬉しそうな顔でこちらを見た。


『これ、私が作ったんだ』

「え、マジか。すげーじゃん。この卵焼きとかめっちゃ美味そう」


指をさすと、彼女はパッと弁当の蓋を閉めた。そしてベッと舌を出し、俺に向かってこう言った。


『めっちゃ美味いよ。あげないけどね!』


見たこともないような可愛らしい笑顔に、俺は一瞬ドキッとしてしまった。



春、見つけた。



コイツ、こんな顔すんのかよ…。反則だ…。


「今度、俺の分も卵焼き焼いてきてくれよ」

『だからあげないってば』


どうやら一筋縄ではいかないようだ。


さて、どうしたものか…。



おわり

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