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南さんちの昔話


※岸本さんちの新妻さん視点のお話です。



南さんちを出るともう陽が傾いていて焦ったが、時計はまだ16時を示していた。空の光が無くなりそうになると、どうしてこうも早く帰りたくなるのだろう。

南龍生堂で買ったドリンク剤が袋の中でカチャカチャと音を立てる。実理さんはどうしているだろうか。今夜は栄養たっぷりのご飯を食べさせてあげなければ…。そんなことを考えながら、いつもより早足で家に向かった。


玄関のドアを開け、ブーツを抜いでいるとリビングの方から実理さんがやって来た。


「どこまで買い物行っとったんや?遅いから心配したわ」

『ごめんなさい。コレ買ってきたもんだから』


そう言って南龍生堂とプリントされた袋を差し出すと、安心したような表情をし、袋を取った。


『実理さんが疲れてるって言ったらオマケしてくれたよ。奥さんもお大事にって言ってたよ。それより体調はどう?』

「寝たらだいぶようなったわ。飯作るやろ?俺も手伝おか」

『いいよいいよ。実理さんは今日は何もしないでゆっくりしてて?私が作るから』


あ…今の感じ南さんちっぽかったかも…。さっきは同棲していたから生活にあまり変化はないと言ったけれど、それは違うなぁと思った。こうやってちゃんと思い合って一緒にいられることは当たり前ではないのだから。


『実理さん、あのね』

「ん?」

『大好きだよ』

「…っ……不意打ちはアカンて…」


七つも年上なのにこんなに真っ赤になって照れる実理さんが愛おしい。思わず手を握るとそのまま抱き寄せられた。


「俺も好きやで」


耳元で甘く囁かれると実理さんに全てを委ねたくなってしまう。心も身体も全部。

そして、それを見透かされるように実理さんの腕が腰に回ってきた。


『ふふっ…疲れてるんじゃないの…?』

「大丈夫やって。おっさん扱いすんな」

『違うよぉ。心配してるだけだもん』

「心配ご無用ですぅ」


実理さんのニッと笑った顔が見えたかと思うと、あっという間に私は抱えられ、寝室のベッドに転がされていたのだった。


『南さんちからお裾分けされちゃったなぁ』

「ん?何て?」

『何でもなぁい』


実理さんの手をギュッと握り、天井から降ってくる愛に包まれた。


いつか我が家の愛もお裾分けしてあげられるような夫婦になりたいな。




おわり


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