満ちるとも、また巡る。


あの日から、毎晩月を眺めるようになった。

少しずつ細くなっていったと思えば、また少しずつその姿を現す。昨日は見えていなかった所が見えると何だか嬉しかった。こんな風に少しずつで良いから彼の事をもっと知りたい。名前も、好きな食べ物も知らないのに、キスの仕方やどんな顔をするかという方を先に知ってしまった。

それでも良かった。

見えていない部分があっても十分、心を奪われてしまっているから。

この月と同じように。


いよいよ明日は満月だ。


今度は何を見せてくれるのだろう。


そう思いながら、今夜も月にグラスを掲げる。





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