私の全て



「盆なのに学校なんか?大変やのぅ」

『あー…うん。でも全然行きたないねんけどね』

「ほな行かんでええやん」

『…ほな、行かん。つよしくんがそう言うなら行かんでええわ』


さっきまで何にもやる気が無かった私が、学校に行きたくないという気を持ってしまった。やっぱりつよしくんの存在は、私の人生にかなりの影響を及ぼすようだ。


「真っ直ぐ帰ったら怒られるやろ?うち来るか?」

『へ…?!』


マヌケなリアクションを取ってしまった。だって仕方が無い。今のはウブな女子高生には刺激が強過ぎるもの。


「…スケベ」

『ど、どっちが…!!』


悪戯っぽく笑うつよしくんもやっぱりかっこ良くて、もうクラクラしてきた。でもそれさえもご褒美に思えてしまう。変態の向こう側という立ち位置はどうやら変わっていないらしい。


いつもの道を初めて並んで歩く。

南龍生堂から帰っていたあの頃みたいに、足取りは軽かった。

つよしくんのいる右側がくすぐったい。

目が合うと泣きそうになってしまう。

だから明日からも私はこの町で生きていくと決めた。

つよしくんと出会ったこの町で、つよしくんが帰って来るのを待とうと思う。

これは人生の一大決心や…!

そんな事を考えていると、懐かしいお店の看板の文字が目に入った。そして、ガラリと重い扉が開く。


「ただいま」

『おかえり、つよしくん』


きっとこれが、私の全て。




おわり


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