ご褒美の金曜日
リビングに入るとテーブルには晩御飯が用意されていて、どうやら食べずに私を待っていてくれたようだ。
もう…最強かよ、私の恋人は…。
こんなに優しくされると明日のことを言い出しにくい。牧さんもお腹が空いているだろうし、とりあえずご飯を食べてからにしよう。
『ご飯ありがとう』
「買ってきたものばかりだけどな。ほら、腹減っただろう?食べよう」
『うん。いただきます』
食べながら牧さんは今日あった面白い出来事や、テレビで流れるニュースの内容についてのんびりと話していた。明日の事を伝えなければとタイミングを図るが、楽しそうな牧さんを見ていると言い出せなかった。
そのまま食事を終え、皿洗いも済んだ。そして最後に今日のメインとなるワインが置かれたのは、食卓ではなくソファの方だった。こっちに座る、つまり色んな合図が含まれていることを察する。
私はフンパツして買ったそこそこお値段のするワイングラスを出し、牧さんの隣りに座った。牧さんは簡単にコルク栓を開け、私の方にボトルを向ける。
グラスに注がれたワインは赤く透き通って綺麗だ。一杯くらいなら、と少し口に含む。牧さんはあまりお酒に詳しくないからか、「美味いのかどうかよく分からないな」と笑いながら少しずつ飲んでいた。本当ならめちゃくちゃ美味しいこのワインを全身で堪能していたはずなのに、明日のことを言わねばということで全く集中出来ない。
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