ご褒美の金曜日


今日は金曜日。

大好きな恋人と、心も身体も流れるがままに過ごせる週に一度のご褒美の夜。

定時まであと一時間になった時、明日休日出勤しなければならなくなった事を知る。つまり、金曜日の夜ををご褒美の日として過ごせないということだ。

今日は牧さんが仕事で貰ってきた美味しいワインを飲むことになっているけれど、それも嗜む程度にしなければならない。

あーあ…楽しみにしてたのになぁ…。

終業のチャイムが鳴る。それでもまだ仕事は山のようにある。金曜日の17時がこんなにもブルーなのは久しぶりだった。


結局、退社したのは20時過ぎだった。牧さん、待ってるだろうな…。明日仕事になった事を伝えるのが憂鬱だ。牧さんは仕方ないと言ってくれるだろうけど、楽しみにしていた分だけ凹み具合が強い。早く帰りたいような、でもなんだか帰りたくないような、心をどこに落ち着ければ良いのか分からないままなんとか家に辿り着いた。


「遅かったな。大変だったろう?」


玄関を開けると既に部屋着に着替えた牧さんが出迎えてくれた。いつもならホッと出来るこの笑顔にも、今日は罪悪感に飲まれそうになった。




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