夜明けまでのカウントダウン
南は私の横に立ち、並んで景色を眺める。手摺りを掴む手が大きくて何だか急に意識してしまう。
「先輩が甘えられへんのやったら、逆に俺が甘えたりますわ」
『はぁ?何でそうなんのよ』
「俺、今日誕生日なんです。せやから一緒に帰ってくれませんか」
何を言い出すかと思えば、また微妙にズレた事を言っている気がする。やっぱり天然なのだろうか…。
『…ホントは私の心配より、それが目的だったんじゃないの〜?』
「……」
『アハハハ!何か言ってよ、もう!』
「…やっと笑った」
安心したのように微笑む南を見て、急に胸がドクドクと慌ただしくなる。これはバレたらダメなやつな気がする…。
『な、なぁんかお腹空いてきちゃった。そうだ!肉まん食べて帰ろっか。誕生日なら特別に奢ってあげるよ』
「えー、さっき食ったんで別のんがええです」
『うげ…可愛くねぇ〜』
コンビニまで歩く道で私たちの影が二つ並ぶのを見て、こういうのも案外悪くないと思った。
『南』
「はい?」
『誕生日おめでと』
そして心の中で、ありがとうを呟く。
南は驚いたのか一瞬動きが止まり、その後目を逸らして俯いていた。耳まで真っ赤だった。
ふーん、そういう所もあるんだ。
…今度は私から声を掛けてみようかなぁ。
夜明けまでのカウントダウンが始まった気がした。
おわり
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