夜明けまでのカウントダウン



「こんな所で何してるんですか」


すると、背後から声がした。振り向かなくても声を聞けば誰か分かってしまう。同じゼミの後輩の南だ。悔しいから振り向かずに答えてやろう。


『南こそ何でこんな所にいるのよ』


何故声だけで分かるか、それは南がよく私に話し掛けてくるからだ。

たぶん、南は私の事が好きなんだと思う。あからさまに私にだけ話しかけてくるし、あからさまに私にだけ親切だから。それでも周りにバレていないと思っているのが何とも不可解で、天然なのか不器用なのか紙一重なところだ。あと、前髪を切り揃えているのはこだわりなのかどうかが気になる所だ…。


「先輩を探しに来てん」


ん…?いつもなら「別にぃ」とか素直じゃない反応をするくせに、何だか調子が狂ってしまう。


『んで、どうしたの?』


それでも平静を装いながら聞くと、南は目線だけを逸らし、少し照れくさそうに言った。


「いや、先輩がなんやいつもと様子がちゃうな思て」

『…あんまり顔に出るタイプじゃないんだけどなぁ。私もまだまだ修行が足りないね』

「…たまには誰かに甘えてもええんちゃいます?」


それが簡単に出来ないからここに来てる、ということさえも南には隠したり誤魔化したりが出来ないんだなぁ…。

そんなに好きかい?

こんな私のどこが良いんだろう…。




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