キャプテン会議
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あの日、土屋の妹に電車で声を掛けてからというもの、何となく電車で会っては話すようになった。相変わらずフワフワしていて、俺の周りにいなかったタイプなこともあり、話していて新鮮だった。そして何より、守ってやりたくなるという感情が初めて湧いた気がした。女なんて下手したら男より強いんじゃないかと思っていたくらいだったから。
今日もいつものように電車に乗る。そして当たり前のようにあの子の隣りに行き、他愛も無い話をする。気を張らなくても良いし、ただ楽しそうに話す彼女を見ているだけで満たされていた。
そんなある日、土屋から連絡がきた。
「練習終わったらちょっと会わへん?キャプテン会議しようや♡」
この文面から、岸本は連れて来るなと読み取れる。あと最後のハートマークにめちゃくちゃ腹が立った。相変わらず何を考えているのかよく分からないが、土屋のことだから何かしら目的や意図があるはずだ。別に会うのは問題ないが、それよりもどうやって岸本を振り切るかの方が悩ましかった。
練習が終わり、着替えをして帰ろうとすると案の定、岸本が話し掛けてきた。
「南、何やえらい急いどるな。どっか行くんか?」
コイツは普段はアホ代表のくせに、こういう時は何故か妙に勘が良い。
「俺やって約束の一つや二つあんねん」
少し口調が強かったかもしれないと思い、岸本の方を見るとめちゃくちゃニヤニヤしていた。いや、ニタニタと言った方が正しいかもしれない。何やコイツ…キモ過ぎやろ…。
「名前ちゃんやろ?」
「は?」
「隠さんでもええやん!俺とお前の仲やろーが!」
ご機嫌そうに肩を組まれ、さっきのニタニタ顔が顔のすぐ横にある。不愉快極まりないが、それよりももっと気になることがある。
「お前いつの間に下の名前で呼びよるん?」
「あ?せやかて〝土屋〟なんて呼ぶん嫌やろ?ほな南は何て呼んどるん?」
「……」
「え……まさか呼ばへんの…?」
そう。そのまさかだ。
岸本の言う通り〝土屋〟と呼ぶのは嫌だ。理由は言うまでもなくあの万年ヘラヘラ男と同じ呼び方をしたくないから。しかし別に大して仲良くもないのにいきなり下の名前で呼ぶのは抵抗がある。そもそもガキの頃から一緒の岸本でさえ岸本と呼ぶのだから、考えたところでどうこうなる話でないことなのだ。故に会話の中では名前を呼ばずに会話をしているという訳だ。
「…悪い、もう時間やから行かんと」
「お、おう…。楽しんでな」
何が悲しくて岸本に哀れみの目で見られなければならないのだろう。というかそもそも今日は土屋に会うのであって、あの子に会う訳ではない。全ての勘違いを訂正するのさえも面倒で、何だか肩を重く感じつつ俺は土屋との待ち合わせ場所に向かった。
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